
経済学者バートン・マルキール氏は株式市場を「 ランダムウォーク 」と呼んだ(株価はランダムに動き、新たな情報をすぐに織り込むため、市場を打ち負かそうとしても無駄だという考え方)が、投資家は少なくとも企業の業績見通しを道しるべにできた。だが今や、彼らはおおむね手探りの状態だ。
ドイツの高級車大手 BMW は先週発表した1-3月期決算で、2025年12月期の業績見通しを3月半ばに示した水準で維持した。ただそれはトランプ政権による最近の関税引き上げが7月から部分的に引き下げられるとの前提に立っている。
BMWのオリバー・ツィプセ会長は7日のアナリスト会議で、一定の時間はかかるものの、米国・メキシコ・カナダ間の自由貿易は「再び復活する」との見方を示した。「誰にとってもデメリットが大きすぎる」からだ。
米国は中国と大半の関税を一時停止することで12日に合意しており、先週には英国との間で通商合意が発表されたことから、ツィプセ氏の楽観的見方には一定の根拠があるのかもしれない。だがドイツ銀行の株式アナリストは、BMWの決算発表後、そこまで確信を持てずにいた。顧客向けリポートでは「当然ながらBMWの楽観論を誰もが共有しているわけではない」と指摘した。
非伝統的な手法とはいえ、BMWが示した予測は、数カ月後の経済がどうなるか誰にも分からないという事実への一つの対処法だ。
米フォード・モーターや、ジープなどを傘下に持つ欧州 ステランティス 、米 デルタ航空 、米宅配・航空貨物大手UPSは別の方法を採り、2025年の通期業績見通しを完全に取りやめた。米ゼネラル・モーターズ(GM)、米飲料大手 ペプシコ 、米日用品大手 プロクター・アンド・ギャンブル (P&G)などは目標を下方修正し、独自動車大手 フォルクスワーゲン (VW)は業績見通しから関税の影響を除外した。ユナイテッド航空は安定した環境の場合と景気後退入りした場合の双方のシナリオを提示した。