
トランプ政権による
“衝撃と畏怖”政策
トランプ政権が発足してから一カ月半が過ぎた。事前にある程度予想されていたこととはいえ、トランプ政権が次々と打ち出す政策は各方面に“衝撃と畏怖”を与えている。
昨年の大統領選挙では「トランプの圧勝」と報道されたものの、実際の総得票率はトランプ49.8%対ハリス48.3%で、その差はわずか1.5%だった。米政治サイトのリアルクリアポリティクスによれば、現在のトランプ支持率は48.8%で選挙当時の得票率とほぼ変わらない。
つまり、必ずしも過半の支持を得ているわけではないにもかかわらず、トランプ政権は過去に例をみないほどに権力をふるい、既存の政治秩序を次々と破壊し始めている。それに対して、半分近くいるはずの反トランプ派も、トランプ派から目の敵にされている主要メディアも、防戦一方に追い込まれ、有効な対抗軸を打ち出すことができないでいる。
いま米国で起きていることは、政治的価値観を根底からひっくり返そうとしている点で、まさに“革命”と評してもいいものではないか。だが、このトランプ革命をどう評価するかはともかく、革命というものは、とかく行き過ぎるものである。
トランポノミクスの司令塔は不在
強まるインフレ懸念と景況感の悪化
トランプ政権の経済政策、すなわちトランポノミクスに関していえば、全体を統括する司令塔が不在であるようにみえる。
看板政策である関税は、物価上昇によって消費者マインドの後退をもたらすと同時に、サプライチェーンの混乱によって企業経営にも不透明感をもたらす。その一方で、膨れ上がる一方の貿易赤字の削減につながるかどうかは不確かだ。