武田薬品、パナソニック、日産自動車…
国内でも大型リストラが進むワケ

 東京商工リサーチによると、2024年(暦年)に早期・希望退職募集を行った上場企業は前年比39.0%増の57社だった。募集人数は1万9人で前年の3倍に増えた。このうち直近決算が黒字の企業は34社。例えば、大手電子機器メーカーでは「他社に遅れず人員体制を見直すことが成長に不可欠」との経営メッセージを組織全体に発信したという。

 武田薬品工業も昨年、主に国内の医療用医薬品部門で早期退職を募集した。勤続年数3年以上(25年2月末時点)の従業員が対象で募集人数は定めなかった。このリストラも、成長戦略に従った策だろう。

 同社は18年、世界的な製薬企業を目指してアイルランドの製薬大手シャイアーを買収している。米ファイザーやスイスのロシュなどライバルと互角に戦うためにも、海外事業に従事する人員を拡充する必要があるが、縮小均衡にある国内事業は人員の適正化が必要だろう。

 こうした動きは今年になって加速している。25年1月から5月15日までの間、上場企業のうち19社が早期退職や希望退職の募集を発表した。対象人数は前年同期比87.1%増の8711人(前年同期は4654人)。退職募集数の最大はパナソニックである。

 同社は内外で1万人規模のリストラを行う計画で、国内では5000人程度を削減する見込み。5月9日に公表した構造改革の進捗資料にて、早期希望退職プログラムの必要性を明記している。現在、パナソニックは、サプライチェーン・マネジメントなど産業分野でのソリューション事業を促進する計画という。自己資本利益率を10%以上に引き上げる目標もある。

 ただ、今のところ、パナソニックの収益性は低下傾向にある。車載用バッテリー市場では、中国や韓国勢にシェアを奪われた。赤字事業からの撤退は急務だ。人員を減らして固定費を圧縮し、ひとり当たりの付加価値を引き上げなければ収益低下は食い止められない。

 他方、5月17~18日には日産自動車の国内における人員削減案が盛んに報じられている。報道によると、国内で今夏に営業や経理など事務系の社員、45歳以上を対象に早期退職を募集するという。グローバルに2万人の人員削減を目指す中で(公表済み)、コストカットを徹底し、業績悪化に歯止めをかける必要がある。