日産 消滅危機#31Photo by Koyo Yamamoto

日産自動車は5月13日、「Re:Nissan」と題した経営再建計画を発表した。柱の一つが大胆なリストラ策で、2万人の人員削減と7工場閉鎖を行う。特集『日産 消滅危機』の#31では、日産が示した構造改革プランによって見えてきた”光明と課題”に迫る。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

4期ぶりの最終赤字に沈んだ日産
赤字額は過去3番目に大きい6709億円

「やりたくて、やるわけではない」――。

 4月に日産自動車の社長に就任したイヴァン・エスピノーサ氏は、リストラ策を明らかにした5月13日の記者会見で複雑な胸中を明かした。

 同時に発表した2025年3月期決算は、4期ぶりの最終赤字で、赤字額は同社史上、過去3番目の大きさとなった。売上高は前期比0.4%減の12兆6332億円、営業利益は87.7%減の698億円、一方、純損失は6709億円に膨らんだ。

 大手自動車メーカーの決算では、米トランプ政権下で導入された追加関税の影響が話題の中心となったが、日産は事情が異なる。話題の中心となったのは、「Re:Nissan」と題した経営再建計画だ。

 同計画は、3本柱で構成される。1つ目の柱がコスト削減だ。27年度までに2万人の人員削減や世界17工場のうち7工場の閉鎖を行う。さらにサプライチェーンを見直すなどで合計5000億円の合理化を目指す。2つ目は市場・商品戦略の見直し、3つ目がパートナーシップの強化で、仏ルノーやホンダ、三菱自動車などと生産体制の再構築などで協業を加速させる。

 今回打ち出した人員削減と工場閉鎖は、エスピノーサ社長の前任の内田誠社長時代には見られなかった規模であり、従業員や取引先などに痛みを強いるものだ。しかしながら、経営再建に向けた道筋が見えなかった日産に、リストラによって”光明”が差したことも事実だ。

 次ページでは、エスピノーサ体制の日産の経営再建計画の中身と、その課題に迫る。