今後もリストラは増加・加速へ
氷河期世代も対象、どうしたらいい?

 今後も、改革の一部として人員整理を行い、組織の適正化を図る動きは加速するだろう。将来の展開を予想して成長戦略を策定し、必要な改革を実行することこそ経営であるからだ。

 米欧では、以前からこうした施策を取る企業は多かった。最近の事例だと1月、業績好調な米メタ社が、AI開発費用を確保するために人員を減らすと発表した。5月には、米マイクロソフトが従業員の3%未満を削減すると明らかにしている。

 インターネットやAI関連分野では競争が激化している。中国では、ファーウェイやアリババなどの大手企業からスタートアップ企業まで、秒進分歩の勢いでAIのモデル開発に取り組んでいる。中国勢は半導体のAIチップ分野でも製造技術の向上に余念がない。

 こうした中国勢の追い上げに対抗するには、業績堅調なマイクロソフトでさえ、組織全体の意思決定スピードを引き上げる必要がある。コストを圧縮し、データセンターなどAI関連投資を積み増す必要があるからだ。同社は6000~7000人規模の人員削減に取り組むとみられる。コロナ禍のIT特需をきっかけとした過剰人員を是正する考えもあるだろう。

 世界経済は、トランプ関税などのリスク要因もあり先が見通せない。中国では政府が産業補助金を支給して、AIや電気自動車(EV)関連の企業へ支援を拡充している。

 わが国でも中長期的な事業環境の変化に対応するため、人員数、組織体制の適正化に取り組む企業が増えるだろう。日本企業も、米欧の企業のようになりつつある。

 日産自動車でもそうだがリストラ対象はバブル世代だけでなく、いわゆる就職氷河期世代にも広がっている。個人レベルでそうした変化に対応するには、どうしたらいいか。

 リスキリング(学び直し)を通して先端のデジタル技術に習熟する。あるいは、事業戦略の立案やマーケティング、財務といった専門性を磨く――。そうした人材が増えるに伴い、日本も労働市場の流動性も高まるはずだ。