日産は氷河期世代も対象…パナソニックは黒字でも断行、人手不足の日本で「大規模リストラ」が連続するワケPhoto:Kevin Carter/gettyimages

パナソニックや日産自動車の国内における大規模なリストラが世間の耳目を集めている。日本全体では人手不足が叫ばれる中で、なぜ大規模なリストラが連続しているのか。こうしたリストラではバブル世代だけでなく、就職氷河期世代も対象となりつつあるが、個人レベルで対応できることはあるのか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

日本全体で人手不足のはずなのに
なぜ大規模リストラが起きているのか

 現在、わが国の労働市場全体は人手不足である一方、早期退職や希望退職を募って人員削減を進める企業が出ている。その背景には、「労働市場の需給のミスマッチ」がある。

 人手というものは本来、余っている分野から、足りない分野へ移動することで均衡するはずだ。しかし、日本の労働市場では欧米のように転職が容易ではなかった。新卒一括採用・終身雇用・年功序列型賃金の影響もあるだろう。大企業を中心にそうした硬直的な労働慣行が根強く残っていたため、就職すると定年まで穏便に勤め上げるのが一般的だった。

 企業年金など社会の仕組みも、転職を前提に作られていないので、転職をすると損をするケースが多かった。だから多くの場合で、職場に不満を抱えながら我慢して定年まで勤める方が有利だった。その結果、人手は余った分野から足りない分野へシフトするのが限られていた。

 ところが今、パナソニックや日産自動車など名門企業による大型リストラのニュースが世間を騒がせている。ビジネスを取り巻く環境変化がこれほど速くなると、企業としても雇用を維持するだけでは社会の要請に応えられなくなってきた。5年、10年先を見据えるとなると、人員を整理して将来に備える経営者が増えるのは当然だろう。

 今後、日本企業は本来の意味での構造改革=リストラクチャリングを行うことになるだろう。米欧の企業では、以前からそうした動きは普通だった。わが国も他人事ではいられない。