高級ブランド、米中に代わる市場なしPhoto:Feature China/gettyimages

 中国とインドはいずれも14億人の人口を抱えている。だが中国本土では「ルイ・ヴィトン」の店舗数が60店を超える一方、インドはわずか3店にとどまる。

 デザイナーブランドがインドで苦戦していることは、新たな成長市場を見つけることがいかに難しいかを示している。高級品業界の二大需要国である中国と米国では景気への不安が漂っており、新市場開拓の必要性が一段と高まっている。

 中国と米国の消費者を合わせると、高級品セクターの売上高の約半分を占める。だが中国の消費者需要は低迷が4年間続いている。バークレイズ・プライベート・バンクによると、中国では不動産バブル崩壊を受けて家計資産は30%減少し、高級品の購買意欲が低下した。

 米国の高級品販売は2022年初めにピークを付けた後、減少傾向にある。昨年終盤に見られた消費の緩やかな回復は関税戦争によって芽を摘まれた。売上高で世界最大の高級ブランドグループ、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは、1-3月期(第1四半期)に米国での売上高が前年同期比3%減少したと発表した。同社は中国の数字を個別に公表していないものの、アジアでの売上高は減少率が1割を超えた。

 2025年は高級品業界にとって失われた1年となる公算が高まっており、世界の売上高は2%減少すると予想されている。

 ブランド各社と株主は20年にわたる安定した年率6%の成長に慣れっこになっていた。このため、当然ながら次の有望市場を見つけようと躍起になっている。だが高級ブランドが中国と米国の消費者への依存度を低下させることは簡単ではない。