公務員の危機#9国会対応など民間企業にはない業務を分かりやすく解説した冊子「国土交通省の歩き方」を掲げる国交省の田口芳郎人事課長 Photo by Hirobumi Senbongi

国土交通省が、若手の離職者が急増していることなどに対して危機感を強めている。この傾向が続けば、航空管制や土木工事、海上保安庁の現場のオペレーションが支障を来しかねない。特集『公務員の危機』の#9では、国交省が行政サービスの持続性を確保するために取り組み始めた、本気の「組織変革」の実態に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

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30~40代が他の世代の半分しかいない!
歪な職員の年齢構成に高まる危機感

 生活に欠かせないインフラの整備を行っている国土交通省が人材難に直面している。航空管制や道路の整備、海上保安庁の業務など、全国転勤を伴う職種が多く、共働きの夫婦などから敬遠されやすいことが要因となっている。

 若手の自己都合退職者は、2013年の29人からほぼ一本調子で増え、23年には85人となった(本省勤務40歳未満の退職者)。さらに問題を深刻にしているのが、歪な年齢構成だ。下図の通り、31~45歳の世代は採用抑制をしていたこともあり、その上の世代の半分ほどしかいないのだ。

 現在のボリュームゾーンの40代後半から50代が引退する前に、中堅若手の離職に歯止めをかけ、かつ採用力を強化しなければ、行政サービスの持続性が損なわれかねないのである。

 そこで、国交省は本気の組織改革に乗り出した。経済産業省が一足先に取り組んで、職員に満足度などを聞くエンゲージメント調査の結果が改善し、離職者数が頭打ちになるといった成果を上げている「組織経営改革」(詳細は特集『公務員970人が明かす“危機”の真相』の#3『経産省が、日立など大企業の人材マネジメントを霞が関に移植する最後の賭け!「あれオレ詐欺」「ZOY」文化は封印』参照)を、国交省風にカスタマイズして断行しようとしているのだ。

 国交省のチャレンジは、同省のみならず、日本の行政機関全体の未来にとっても重要で、注目に値する。なぜなら「組織の規模が大きく、業務の内容も多様で、かつ地方転勤が多い国交省が改革に成功し、人材を確保できるようになれば、他の中央省庁だけでなく地方自治体も含めてモデルケースとなり得る」(経産省の組織経営改革をサポートした元大手人材サービス幹部の佐藤学氏)からだ。

 次ページでは、国交省が始動させようとしている組織変革の全貌と、職員の離職防止、採用力強化のための施策を明らかにするとともに、改革を成功させるためにクリアすべき課題に迫る。