
人材の流出が続く中央省庁や地方自治体が人材を確保するには、職員の待遇改善が必須だ。しかし、公務員の賃上げは国民受けが良くないため、積極的に取り組もうとする政治家は少ない。だが、官僚機構のスリム化を含む組織改革とセットで行えば、どうだろうか。特集『公務員の危機』の#10では、日本総合研究所の協力を得て、役所が民間から人材を採れるようになるために不可欠な変革を提案する。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
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役所にCFO、CHRO、CDOを配置し組織を合理化
生産性を高めれば、待遇改善は可能だ!
「公務が危機に瀕している。公務の危機は、国民の危機である」
人事院の有識者委員会である人事行政諮問会議が3月24日にまとめた最終提言はこのような一文から始まる。
実際、国家公務員採用試験の受験者の減少や、若手職員の企業への流出などで、行政サービスの持続性が失われかねないという危機感が高まっている。経済産業省や国土交通省が、人材確保に向けた組織改革に取り組んでいるのはそのためだ(詳細は本連載の#9『航空管制・土木工事・海保の現場が“国交省の人材不足”で黄信号!危機克服の切り札「経産省から移植する組織改革」の切実度』参照)。
だが、いくら省庁が改革に励んでも限界がある。人材の採用力を高め、民間から中途採用した職員を戦力化するために最も重要な待遇の改善は、人事院が動かなければ実現できないからだ。
人事院が改革に乗り出すには、政治のイニシアチブが欠かせない。ところが、公務員の賃上げは国民受けが良くなく、選挙における票になりにくいため、公務員の人材確保に情熱を燃やす国会議員は少数だった。
では、公務員の処遇改善だけでなく、官僚機構の合理化を伴う構造改革とセットならばどうだろうか。
日本総合研究所の山田英司理事は「公務員の人事制度の改革においては、各省庁を俯瞰し全体最適で進める必要がある。そのためには当事者ではない政治の力が欠かせない。生産性の向上を伴う組織改革と人事制度の見直しをセットにした“抜本改革”として打ち出すならば、国民から理解が得られやすい」と話す。
ダイヤモンド編集部は本稿で、国民に受け入れられやすい霞が関の1府12省庁と都道府県庁の抜本改革を提案する。次ページでは、日本総研の協力を得て作成した役所の再編案や、人材マネジメント改革の内容を示す。政府内でCFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)などを任命し、役割を見直す場合の行政機関の組織図も公開する。