経費や割り勘精算では割引価格は使えなくなる?

 また、より広い視野で考えると、これら個別的な問題以外に「ETCによる割引をここまで複雑化していいのか」という疑問も浮かび上がってきます。

 そもそも見直し後のETC深夜割引は、(ETCコーポレートカードをのぞけば)ETCマイレージサービスによる還元のため、通行時には通常料金が表示されます。そのため、走行した時点では実質的な通行料金(マイレージサービスによる還元額を反映した通行料金)がわかりません。そのためグループでドライブに出かけて通行料金を「割り勘」にする場合も、その場での精算が困難になります。

 また自営業者等が通行料金を経費として申告する場合、その額を通行料金そのままとするのか、還元額を引いた金額とするのかも、戸惑うところでしょう。

ETC割引を複雑化しすぎると、システム障害リスクが高まる

 冒頭に書いた通り、NEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本は、7月に予定されていたこの深夜割引の見直しを延期すること、開始時期は未定であることを発表しました(5月28日)。

 原因は、4月6日に起きた広域的なシステム障害です。1都7県、106カ所の料金所でETCによる料金収受ができなくなるという障害が発生し、その際、同社が料金所で人手による処理を行ったことで、各地で大規模な渋滞が発生しました。

 NEXCO3社は危機管理検討委員会を立ち上げてシステム障害の原因を究明しているとのことですが、この障害の影響でシステム開発が一時中断されており、7月からの運用開始は困難、運用開始時期は未定ということになったようです。

 今回のシステム障害の原因は現段階では明らかになっていませんが、一般論として、システムが複雑になればなるほど、こうしたエラーも発生したときの原因究明と復旧に手間取ることが考えられます。もしシステム障害で、個々の車両の走行データがきちんと割引に反映できないような事態となれば、利用者の不満はこの上なく高まるでしょう。

 本当にこの見直し案のままでいいのでしょうか。高速道路の通行料金体系のあり方については、「高速道路の効率的な活用」「受益者負担の公平化」も考えつつ、より抜本的な改革を検討してもらいたいと思います。