「パワー暗記」をばかにするなかれ
最新の第二言語習得論に沿った方法
「大量の暗記」という言葉に、拒否反応を示す人は多いだろう。英語学習においてもコスパやタイパを重視する人は、「ビジネスのプレゼンで役立つ」といった分かりやすい結果につながるとは思えない、大量の英文を覚えて何の得になるのか? と鼻で笑うかもしれない。
だがしかし、「大量の暗記」というシュリーマンのメソッドは、最新の第二言語習得論や脳科学研究などが示す正しい方向に沿っている。
もっとも、「大量のインプットと少量のアウトプット(*)」が正確な表現となる。
話す力(および書く力、総じてアウトプット能力)を伸ばすには、一見すると余分と思われるものも、大量にインプットすることが実は重要なのだ。
第一に、日本語の感覚と異なるコロケーション(言葉の相性)の学びにつながる。
例えば、「答えを考えておきます」を日本語感覚で英語にすると、“I’ll think the answer.”と言ってしまうかもしれない。しかしこの表現は、実に奇妙な印象を与える。正解は、“I’ll find the answer.”だ。
現実の会話のコロケーションを忠実に教材化することは不可能に近い。量が多すぎてきりがないのだ。一方、コロケーションは、まとまった文章を読むことで文脈と共に自然に学べる、という研究結果もある。
正しいコロケーションが体得されると、意識せずとも自然で分かりやすい英語を話せるようになる。いわば英語の「こなれ感」が身に付き、ネイティブの会話相手からも上達を認められるはずだ。例えば、職場の外国人の同僚から「最近すごく分かりやすく話してくれて、とても助かる」と感謝されたり、久しぶりにレッスンを受けたオンライン英会話の講師から「何が起きたの? 別人だと思ったわ」と驚かれたりするだろう。