トランプ政策で高まるユーロの存在感、「ドル離れ」進行で4年ぶり高値更新も視野Photo:PIXTA

ユーロ圏経済が低迷する中
ユーロは2021年以来の高値

 いわゆるトランプ関税を受けて為替市場は不安定な動きを続けている。世界経済の鈍化リスクもあり、リスク回避の円買いやスイス買いの動きは、ある程度予想されていたが、ここにきて強まっているのがユーロ買いの動きである。

 ユーロドルは2023年7月、2024年9月の2度において1.12ドルの上値抵抗水準を大きく上抜けできなかったが、今年(2025年)4月11日に1.12ドルを超えた。その後もユーロドルは上昇が続き、4月21日には大きな節目である1.1500ドルを超え、2021年以来のユーロ高となっている。

 ユーロは世界的にリスク警戒感が高まる局面では、比較的売られることが多い。たとえば、2008年9月のリーマンショック時にもユーロは売りが進み、ユーロドルは同年6月の1.60ドルちょうど近辺から同10月には1.2330ドルまで下落した(23%のユーロ安)。ユーロ円もリーマンショック前後で170円手前から113円台半ば近辺まで下落した(33%超のユーロ安)。

 足元ではトランプ関税の影響を受けて、世界経済の先行き不透明感が強まっている。ユーロ圏を含むEUは、(90日間の猶予中とはいえ)4月5日に発動した一律10%の関税に加え、20%の関税が今後課せられる可能性が高く、ユーロ圏経済にとって厳しい状況が見込まれる。

 EUの対米輸出は約5,710億ドル、対米輸入は約3,560億ドル(ともに2024年)で、対米貿易黒字は2,150億ドルと巨額だ。最大の輸出品目は医薬品(輸出全体の約20%)だが、トランプ政権はEUから輸出される医薬品に関税をかける方針を示している。

 ユーロ圏経済は、2023年10-12月期のマイナス成長から回復したものの、2024年第4四半期でも成長率が前期比+0.2%に留まるなど低成長が続いている。ユーロ圏経済は、アフターコロナの物価高も落ち着き、利下げも続け、さてここからというタイミングでトランプ関税というショックを受けている。