小:はい。価格の値下げは、会社としてものすごく「大きな宣言」です。なにしろ収益のリミットを自ら決めてしまうことになるのですから。それほど「多くのお客様にステランティスのクルマに乗っていただきたい」という思いが強いということです。
F:この大幅値下げは一時的なもの、キャンペーン的なものですか。半年経ったらまた値段をガンと元に戻すとか……?
小:いやいや。そんな事はしないです。自動車の価格を下げるといのはとても大変なことなんです。この値下げは、企業としての覚悟、インポーターとしての覚悟の現れです。ステランティスジャパンはこの値段で勝負していくという、企業としての意思表示です。決して一時的なキャンペーンではありません。
日本では、PHEVもEVも生半可なことでは売れない
現在、ステランティスは日本国内で、ジープ、フィアット、シトロエン、プジョー・アルファロメオ・DSオートモビルと6ブランドの乗用車を展開している。2024年は6ブランド併せて4万2485台の販売実績がある。健闘している、という見方もできるが、この数字は輸入車全体からすればわずか7%。6ブランドあわせての数字だから、お世辞にも高いとは言い難い。今回の値下げで一気にシェアを取りにいく狙いがあるのだろう。
ちなみに最大の値下げはアルファロメオ トナーレの50万円。このクルマはPHEVだ。一方でジープのコマンダーはわずか10万円。値下げ幅にも濃淡がある。この“濃淡”からも企業の思惑が透けて見えよう。
F:PHEVやEVが特に値下げ幅が大きいですね。日本は先進国の中で屈指のEV後進国。やはりある程度のテコ入れしないと売りにくいですか。
小:EVに関しては、販売の現場の皆さんが、「もうこれしか売れない」という状況を作らないと、決して売れません。EVを売ることが一番最優先の仕事なんだっていう状況に持っていかないと売れないんです。私は古巣の日産でEV事業を担当していたので、EV販売の大変さは身に染みて分かっています。生半可なことでは売れませんよ。