3つの「ない」で若手が困惑!
早期離職が多い職場の特徴

 近年の働き方改革の結果、残業が減り、有給取得も義務化され、以前よりも確実にワークライフバランスは整ってきています。企業はコンプライアンス遵守やハラスメント対策の責任も重視され、目的や必要性の不明な訓練や、指導という名の激しい叱責は粛清されつつあります。ホワイト職場が増えてきているのは確かでしょう。

 さらに近年は採用難ということもあり、特に若手が働きやすいよう初任給をアップし、コロナ禍以降もリモートワークを継続。教育制度や福利厚生を充実させる企業が増えています。

 Aさんの会社も同様に、新入社員はもちろん既存社員にも長く働いてもらえるよう、厳しく指導したり仕事を振り過ぎたりしないよう気を遣う風潮がありました。それでも早期離職者が出るのが現実です。こうした企業には以下の特徴があります。

(1)若手が理解できる業務指導になっていない

 AさんがKさんを業務指導したケースを振り返ってみましょう。

 Aさんは、気難しいT社の部長を訪問する目的について、明確には伝えていませんでした。アポを取って訪問するのは、まず何より新人Kさんの人柄を知ってもらうためであり、リモート営業ではどうしても分からない細かなニュアンスや情報を得るためだったこと。大切な業務指導プロセスとして同行させていること、そしてこの経験が必ずや今後のKさんのスキルに生きることなどです。

 いわゆるZ世代の特徴として、個性を尊重する教育を受けたデジタルネイティブであることが挙げられます。彼・彼女らへの伝え方は、「みんなやってきたから」「営業は足で稼ぐんだ」といった抽象的な表現では響かないでしょう。また、効率性や可視化が重視されたスマホというツールを駆使している世代に、「ついてきて」「真似してみて」は通用しません。業務の意味と展望を言葉や態度で示さないと、新人が理解できる業務指導とは言えないのです。

 もしKさんの中で、営業職の職責として足を運ぶ行為が正当だと理解できていれば、いきなりメールで見積もりを送ることはなかったでしょう。