1本目の自主制作映画の作成にあたって貯金を全額投入!
“表現したい気持ち”を家族も理解してくれている
――今回、初の映画作品として『キャンドルスティック』のメガホンを取ったわけですが、これも、新たな「表現」へのチャレンジということでしょうか?
米倉 そうです。じつは30歳になってから、それまでに作ってきた映像のほとんどが、人に頼まれて作ったものばかりだったことに後悔の気持ちが湧いてきたんです。もっと自分自身が表現したいことを映像にしていかないと、この先、映像作家としてやっていけなくなるんじゃないか。そんな焦りを感じるようになりました。
なので、じつは『キャンドルスティック』を撮る前に、自主制作映画を一本撮っているんです。わずかな貯金をすべてつぎ込んで、自分が本当に作りたい映画を形にしました。
――自主制作映画といっても、それなりにおカネがかかりますよね。奥さまとお子さんがいらっしゃるそうですが、貯金を使い果たすことは反対されなかったのでしょうか?
米倉 おそらく、妻は心配だったと思います。でも、結婚前から僕がおカネよりも“表現したい”という気持ちを大事にしていることを理解してくれていたので、何も言わず、やりたいようにやらせてくれています。
――奥さまの愛を感じますね。ところで『キャンドルスティック』は、日本のほか、台湾、イランを舞台にした国際色豊かな映画に仕上がっています。初監督作品でこれほどスケールの大きな映画を作ることができたのは、どんな気分ですか?
米倉 ロケ地だけでなく、スタッフもフランス人や韓国人など、世界中から集まってもらいました。国籍にとらわれず、最高のクリエイターたちと一緒に仕事がしたい。そんな僕のわがままをプロデューサーが受け入れてくれたことに、感謝しています。
――今回の映画は、資金の集め方もユニークだったそうですね。
米倉 近年の邦画は、テレビ局や出版社、広告代理店など、複数の企業が出資し、共同で著作権を保有する「製作委員会方式」で作られるのが一般的です。一方で、『キャンドルスティック』は日本では数少ない一般投資家が出資しやすい形で製作されました。さまざまな面で新しい試みに挑戦している映画に携わることができたのは、自分にとって非常に貴重な経験でした。
――今後は、どんな活動をしていきたいですか?
米倉 映画監督として名前を広めることで表現の機会を増やしていきたいですね。この映画を通じて、FXや投資についての知識も深まりましたが、僕にとっての“投資”は、あくまで映像づくり。これからも貯金は取り崩していくつもりです(笑)。