株主総会2025#30Photo:PIXTA

東証スタンダード上場の大盛工業で、監査等委員の内部告発に始まった混乱に収拾の気配がない。渦中の山口伸廣会長が10月29日の株主総会で取締役を退任することが決まり、会社側は事態の幕引きを図る構えだが、告発した監査等委員は経営陣のみならず、会計監査人の責任を問う意見を監査報告書に付記する方針を堅持。対立は泥沼の様相を呈している。特集『株主総会2025』の本稿で明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

不透明な資金調達を社外取が告発
会社は「再任されぬ逆恨み」と反論

 ことの発端は、大盛工業が2022年7月に行った新株予約権の発行による資金調達だ。この取引を「不透明だ」と告発したのは、公認会計士でもある同社社外取締役の熊谷恵佑監査等委員である。

 熊谷氏が問題視したのは、新株予約権の引受先であるマイルストーン・キャピタル・マネジメントが、大盛工業の山口伸廣会長の関連当事者の疑いがあるプラス社から株式を借り入れる契約を結んでいた点だ。プラス社の本店所在地(神奈川県湯河原町)は、山口氏が代表理事を務める財団の住所と同じであり、関連当事者取引の可能性がある。だが、会社側はそれを開示していない。

 熊谷氏は、この取引が山口氏への利益供与を目的とした利益相反取引に当たるとの疑念を抱いて調査に乗り出したが、会社側は「選定監査等委員以外に調査権限はない」などと主張して資料提出を拒否。こうした組織的な調査妨害があったと主張する熊谷氏は、株主総会で提出される監査報告書に「付記事項」として自らの意見を記載し、株主に対して問題を直接訴える方針だ。

 この問題をダイヤモンド編集部が報道(『【独自】大盛工業の監査等委員が異例の内部告発!不透明な資金調達の「調査を妨害した」と経営陣の再任反対を表明へ』参照)したところ、大盛工業は10月14日に公式見解を発表した。

 それによれば、関連当事者の指摘を受けて大盛工業は、外部弁護士および監査等委員会による調査方針を決定。一方で熊谷氏がこうした主張を始めたのは、同氏を監査等委員に再任しない方針を伝えた今年1月以降に「突如始まったもの」であり、調査要求の内容も「的外れ」だとし、一連の告発は再任を否決されたことへの「逆恨み」であるかのような姿勢を強くにじませている。会社側の対応も「特段の問題はない」とした。

 問題の焦点は、22年7月の新株予約権発行が関連当事者取引であったか否かだ。実は大盛工業の栗城幹雄社長は、ダイヤモンド編集部の取材に山口氏とプラス社の関係について詳細に述べている。

 次ページでそれを公開すると同時に、熊谷氏と対立を深める監査法人の存在を明らかにする。