生の魚介類は
水道水でしっかり洗うこと

 続いて生で食する機会が多い魚はどうだろう。夏場には海産魚介類に「腸炎ビブリオ菌」が多く発生する。この菌に汚染された食品を口にすることで感染し、やはり腹痛や下痢、吐き気、嘔吐などの症状が起きる。

「タコ、イカ、マグロ、アカガイ、アジなど生で食べる魚介類には注意が必要です」と望月氏。

「腸炎ビブリオ菌は海水など塩分があるところを好み、真水(水道水)に弱い性質があるので、水道水でしっかり洗うことで予防できます。加熱をすれば感染しませんが、調理器具や水などを介して感染する場合もあるので、生の魚介類を触ったらよく手を洗いましょう。また使用した調理器具が他の食品に触れないように気をつけてください」

 加熱すれば菌が死ぬ可能性が高いものの、アサリやシジミでみそ汁を作る場合など、やはり事前に水道水でよく洗ってから火にかけたほうがいい。腸炎ビブリオ菌以外にも、真水で洗うことで死ぬ細菌や微生物も多いという。望月氏はアジフライを作るときにも、まず最初にアジを真水で洗うそうだ。

激しい痛みや嘔吐を起こすアニサキス
3つの予防法とは?

 ヒスタミンや腸炎ビブリオ菌は万が一感染しても自然治癒することが多いが、怖いのはアニサキスによる食中毒。アニサキスとは寄生虫(線虫)の一種で、白色の少し太い糸のように見える。

写真:サバの内臓にいるアニサキスサバの内臓にいるアニサキス

 アニサキス幼虫はサバやアジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生し、人がその魚介類を生で食べると、アニサキス幼虫が人の胃壁や腸壁に刺入してアニサキス症を引き起こす。食後数時間後からみぞおちの激しい痛みや嘔吐などが起きるのが特徴だ。この場合は医療機関を受診し、内視鏡でアニサキス幼虫を摘出しなければならない。

 予防法は3つあり、一つは「目視」で確認すること。私はかつて食べる前に、自分で調理したブリの照り焼きに寄生したアニサキスを見つけたことがある(ブリに寄生虫が絡み付いている様子が脳裏に焼きつき、しばらく魚を食べられなくなるほどのトラウマになった)。生魚を切るなら、細かく薄切りして肉眼でチェックしたい。

 二つ目は冷凍された魚「船凍品」を選ぶことだ。

 管理栄養士で老舗料亭「菊乃井」常務取締役の堀知佐子氏が説明する。

「天然のサケやカツオを買い、自分でさばいて刺し身にしたときや、また火の通りが十分でなかったときに、アニサキス症を発症してしまった話はよく聞きます。アニサキスはマイナス20℃で24時間以上冷凍すれば死にますから、一般の方は船凍品か解凍された品を選ぶと安心でしょう」

 そして3つめは70℃以上で加熱すること。十分に加熱すればアニサキスは死ぬ。

刺身を食べるときは
薬味や緑茶を活用して

 刺し身を食するときなど、ネギ、ワサビ、生姜のような抗菌作用がある薬味を添えるのもいい。殺菌作用はないが菌の増殖を抑えられる。緑茶に含まれるカテキンも食中毒予防になる。

「病原性大腸菌O157を生理食塩水と緑茶で培養した実験で、生理食塩水では24時間後、菌の数が約1000倍になったのに対し、緑茶のほうは5時間後にはO157が完全に死滅したという報告があります。カテキンがO157の細胞膜を破壊したのではないかと考えられます」(望月氏)

 刺し身などの生ものを食べた後に緑茶を飲んだり、料理に粉茶を振りかけたり、スープに緑茶を隠し味として入れても。