それは逆説的にいえば、今ある環境(住居、家庭、職場、学校、近隣、文化、人間関係)が自分にとって安全でなかったり、危険があったり、居心地がよくなかったりするのであれば、自分の安全を守るために何らかの問題解決を講じる必要が出てきます。
サポートネットワーク(編集部注/家族や友人、職場の人、医療・福祉の専門職などの、助けを求められる人のつながり)を活用して誰かに助けを求めるとか(例:ハラスメント窓口や警察に相談する)、そのような環境を改善するよう関係各所に働きかけるとか、関連する人物に言動を改めるよう求めるとか、自分の方からそのような環境や人間関係から離れるとか、そういったことです。
居心地のいい職場だったのに……
筆者の心を壊したひとつの問題
ここで私自身の体験をお伝えしましょう。
私は一時期、民間企業のなかで契約社員としてメンタルヘルスの仕事をしていたことがありました。それは大変やりがいのある仕事で、仲間にも恵まれ、とても充実しており、また契約社員といえども雇用環境は良好で、できればその企業で長く働きたいと考えておりました。
しかし問題が1つありました。私が関わっていた事業のトップ(女性)がパワーハラスメントをする人だったのです。私は入社してから、同じ部署の男性2人が彼女からハラスメントを受けているのを何度も目撃し、違和感を覚えていましたが、ほどなくして私自身も彼女からハラスメントを受けることになりました。
それでも私はその企業での仕事を大切に考えていたので、何とかその環境のなかでセルフケアをしたり、同僚の男性2人と愚痴を言い合ったりしながらしのいでいたのですが、やはりそれには限界がありました。私の働く場所はハラスメントという明確なストレッサー(編集部注/ストレスの原因として自分に降りかかってくる刺激や出来事)によって、あまりにも安全ではなく、自分の心身の健康を損なう危険がありました。もちろん居心地などよいはずがありません。
当時はまだ「パワーハラスメント」という用語もなく、「ハラスメント相談室」といった今では多くの企業で整備されているような窓口もなく、会社が契約するカウンセラーに相談してはみたものの、あまり助けになりませんでした。