黄海が新たな火種に、中国領有権主張の動きか 韓国警戒Photo:SOPA Images/gettyimages

【ソウル】2月のある日、韓国の調査船は中国が黄海(韓国名:西海)の中ほどに設置した異様な大型構造物に近づいた。黄海は、両国の間に位置する狭い海域だ。

 中国海警局の大型船舶2隻と中国の小型船3隻が、韓国調査船の進路を素早く遮った。中国小型船の乗組員らは、韓国の船を追い返そうと刃物を振りかざした。

 2時間後、韓国船は同国沿岸から約370キロに位置する謎の構造物の詳しい調査を断念し、引き返した。その構造物は、改修済みの多層式石油掘削装置の隣に水産養殖用の黄色いケージが設置され、救命ボートやヘリ発着場を備えつけたものだった。

 これは中国の黄海における一連の挑発行為の最新例だ。すでに韓国の領海や領空への侵入を繰り返しており、情報収集目的の可能性があると一部専門家が指摘する13基のブイを設置している。

 中国がアジア地域での自らの影響力に、近隣諸国や米国が盾突くのも許さないという明確な意思を示す広範な活動を繰り広げる中、黄海は最も新しい火種として浮上している。

 中国はこうした挑発と並行し、世界貿易に不可欠な海上交通路である南シナ海の全域でも領有権を主張している。中国軍の戦闘機が台湾周辺に出撃する頻度が増える一方、先月には軍事演習中、警戒監視を行う日本の海上自衛隊の哨戒機を追尾した。今年はオーストラリア沖で実弾演習も実施している。

 だが黄海における摩擦は、台湾を巡って将来、米中両国の紛争が起きた場合、戦略的重要性を持つことから特に警戒されている。中国が台湾占拠を試みるとなれば、海軍のミサイル火力を配備するためにこの水域への自由なアクセスを求める可能性が高い。

 韓国の黄海沿岸から16キロ内陸に入った場所には、軍関係者2万8500人が駐留する米軍の国外最大基地が位置する。また約800キロ離れた日本の各地には数万人の米兵が駐留している。