
特集『ガンダム・ジークアクスの舞台裏』(全13回予定)の#13は榊原博チーフガンダムオフィサー(CGO)インタビューの下編。長寿IP(知的財産)であるガンダムを、教育や研究活動、そして万博など社会的分野で活用する動きが進んでいるという。アニメやキャラクターという枠を超えて進む「社会に出るガンダム」の状況を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
8年で倍増のガンダム事業売上高、グループ一気通貫体制で成長
誰もがそれぞれの「ファースト」ガンダムを持つ裾野の広いIP
――2016年3月期には683億円だったガンダムIPのバンダイナムコグループでの売上高は、直近の25年3月期に1535億円に達しています。8年間で約2倍に伸びていますが、これはどんなことが影響しているのでしょうか。
良い作品が発表されていることと、商品の生産キャパシティー増、そしてアイテムカテゴリーの拡充という各施策の相乗効果ですね。版権管理、映像製作、商品販売というIP周りの事業が全てグループ内で完結しており、定期的にガンダムプロジェクト(本特集#10参照)という会議体で情報共有していますので、コンセプトの理解度の深さやスピード感が、他のIPとはちょっと違うと思っています。
これは私見ですが、ガンダムが45年続いてきた理由の一つが、いろいろなガンダムがあり、エリアや世代によって異なる自分のお気に入りのガンダム、つまり自分にとっての「ファースト」のガンダムをそれぞれのファンが持っていることだと思うんですよね。つまり、最初から最後まで主人公が固定のIPと異なり、ガンダムは、アムロもいれば違う主人公も出てくる、裾野が広いIPだといえるわけです。
さらに、例えば今回のジークアクスで主人公のマチュに思い入れを持って視聴していた人が、次にファーストを視聴したりするなど、いろいろな動き方をするちょっと特殊なIPの一つでもあると思います。そういった部分をちゃんと商品に連動してマーケティングしていくのがわれわれの仕事かなと思っています。
ガンダムブランドの世界展開は、ガンダム事業全体にとって重要テーマだ。ガンダムIPを統括する榊原CGOはどのような世界戦略を描いているのか。どのエリア、どの世代にどのようなマーケティング体制を敷いているのか。また、実はガンダムを活用した「社会活動」も各所で進められているという。次ページで詳しく聞いた。