高い読解力があれば
知能を自己成長させられる
ケラーの物語は、教育の劇的な可能性を示している。手話アルファベットを教わったことで、彼女は言葉を学び、コミュニケーションを取れるようになった。その基礎から、彼女は読み書きを学び、活発な知的活動を送ることができた。
この初期の機会がなければ、ケラーは永久に孤立したままだったかもしれない。
ケラーのように幼少期からの完全な盲ろう状態は比較的稀だが、基礎となる重要なスキルが欠落しているために、さらなるスキルが身につかないという現象は一般的に見られる。
学びの基礎でもある読解力について考えてみよう。読む能力がなければ、世界の知識の大半にアクセスできない。実際に研究者たちは、ある時点での読解力が、その後の知能の発達と密接に関連していることを発見した。
スチュアート・リッチー(編集部注/心理学者。キングス・カレッジ・ロンドンの精神医学・心理学・神経科学研究所の講師)らは、一卵性双生児の子供たちの読解力と知能指数を、7歳、9歳、10歳、12歳、16歳の時点で測定した。
幼少期には、読解力と知能の間に高い相関は見られなかった。しかし研究者たちは、双子の一方が早い時期により高い読解力を持っていた場合、後になって知能指数が高くなる傾向が見られることを発見した。
この研究から示唆される解釈は、高い読解力を持つことで他の知識やスキルも習得しやすくなり、知能を自己成長させられるということである。
初期の成功体験は
好循環を生み出す
文章を読む際、子供たちは非常に不規則な正字法(文字を正しく表記するための規則体系)を理解することを強いられ、その結果、数千もの音と綴りのパターンを扱わなければならない。さらにそのほとんどが、完全に一貫して適用されるわけでもない。
そしてこれらを、完全に自動的にできるレベルまで学習しなければならない。単語認識の認知負荷が最小限になって初めて、解釈の困難さや問題解決、新しい概念の学習に対処するための余力が生まれるのである。