化学サバイバル#22三井化学のエンジニアリングプラスチック(同社HPより)

三井化学は2026年1月に、高機能樹脂「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」の営業業務をダイセルの子会社ポリプラスチックスに委託する。三井化学の全エンプラ製品が対象。研究開発と製造は継続するものの、顧客対応や販路開拓はダイセル側に委ねる。一見地味な提携に見えるが、三井化学が進める「石化再編の一環」で、化学業界ではエンプラ再編の序章とも受け止められている。特集『化学サバイバル!』の本稿では、今回の提携がエチレン生産設備、合成樹脂に続いて高機能樹脂の再編につながる動きであることを明らかにしていく。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)

三井化学がエンプラ営業を委託へ
ダイセルと組み「ソフトな撤退」!?

 三井化学は10月27日に、高機能樹脂「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」の営業をダイセル子会社のポリプラスチックス(東京都港区)に委託すると発表した。三井化学の全エンプラ製品が対象となる。

 三井化学は近年、石油化学事業の構造転換を加速させている。出光興産との合弁会社のプライムポリマーを軸とするポリエチレン・ポリプロピレン事業の再編に加え、機能化学品やモビリティー素材、さらには医療・ヘルスケアに経営資源を集中させている。

 いずれも「ROIC(投下資本利益率)」を意識した事業ポートフォリオ改革の一環といえる。今回のエンプラ営業委託も、その流れに位置付けられる。専門紙記者はこう解説する。「エンプラは三井化学にとって主力ではなく“はじっこ”の事業。経営資源のメリハリをつける中で、こうした扱いになるのは自然」。

 三井化学が手がけるエンプラは、耐熱性ポリアミド「アーレン」と熱可塑性ポリイミド「オーラム」の2製品。どちらも自動車や電子部品などに使われるが、国内外で同種製品の競争が激しく、収益力は限られていた。

 ある業界関係者は「三井化学は当初、これら2製品の売却も検討したが、買い手がつかなかった。そこで“営業委託”という緩やかな形を選んだ」と打ち明ける。つまり、製造設備や研究開発拠点を手放さずに、販売負担だけを軽減する“ソフトな撤退”を選んだといえる。

 実は、この三井化学が投じた一石が化学業界全体に広がる可能性もある。次ページでは、他社のエンプラ再編構想も含め業界全体の今後の動きを探っていく。