入ってきた情報の意味は、すでに脳内整理棚に格納されている過去の情報と照らし合わせ、もっとも情報の構造(意味)が一致する区画に格納されます。もし過去に格納されたどの区画の情報とも一致しない場合は、「新しい概念」として、まったく新しい区画に格納されます。

 これが「分かった!」「納得できた!」という瞬間なのです。

 つまり「分かる」とは、情報が最終的に脳内整理棚の一区画に入れられたことです。逆に言えば「分からない」とは、その情報が脳内整理棚に入れられなかったことを意味します。

伝達内容を“事前加工”して
脳内関所を通りやすくせよ

 以上、脳内関所で行われる5つの作業を簡潔に説明しました。そこで「分かりやすい説明とは何か?」という最初の問いに戻ってみましょう。

 脳内関所での作業負担が大きい説明は、分かりにくい説明なのです。反対に、脳内関所での作業負担が小さい説明は、分かりやすい説明です。つまり「分かりやすい説明」とは、聞き手の脳内関所で行われるはずの作業を、なるべく説明者が事前に代行処理し、脳内関所の作業負担を軽減することです。

 我が政党の主張を有権者に説明するときも、重役を納得させる企画書を書くときも、離婚裁判で高額の慰謝料を勝ち取りたいときも、すべて同じです。自分の主張が有権者や重役や裁判長の脳内関所で素早く審査されるように、工夫(事前加工)すればよいのです。

 そうすれば、あなたの主張は、素早く相手の脳内整理棚の一区画に格納され、有権者も重役も裁判長も、あなたの主張を「分かった。あなたの言い分は正しい」と言ってくれるはずです。

 このように「分かりやすい説明」とは、周囲の人に自分の意図を正しく伝える魔法の杖なのです。