まず太陽がどのようにして莫大なエネルギーを発生させているかを見て、核融合の原理とそれを実現するための条件を見てみましょう。

太陽が放出するエネルギーは
どのように生まれているのか?

 太陽の表面からは、1秒当たり約4.3×10^26(編集部注/10の26乗)ジュールという莫大なエネルギーが宇宙空間へと放出されています。これは1秒間に月の質量の10倍もの石油を燃やしたときに出てくるエネルギーに匹敵します。ジュールというのはエネルギーの単位で、たとえば1リットルの石油を燃やすと約3700万ジュールのエネルギーが放出されます。

 太陽の質量は月の約26億倍なので、もし太陽が石油からできていれば、たった数千年で燃え尽きてしまいます。

 一方で太陽の年齢は約47億年と推定されているので、石油を燃やすような化学反応では太陽の放出エネルギーを出し続けることはできません。そもそも物質が「燃える」という化学反応は物質に空気中の酸素が結びついて起こるものなので、酸素が必要ですが、宇宙空間には酸素がないので、初めから化学反応でないことは明らかです。

 20世紀の新しい物理学である相対性理論と量子力学は、この難問に対して明確な回答を与えました。それが水素の核融合反応における静止エネルギーの解放というメカニズムで、1938年のことです。

 つまり、太陽のエネルギーは内部で何かが燃える化学反応によるものではなく、原子核が合体する核融合反応によるものなのです。

 アメリカの物理学者ハンス・ベーテとドイツの物理学者カール・フリードリッヒ・フォン・ワイツゼッカーは、恒星の中心部で水素の原子核である陽子同士が融合してヘリウム原子核を作る具体的なメカニズムを解明しました。

 核融合で出てくるエネルギーを計算してみましょう。

 4個の陽子が1個のヘリウム原子核になることで、4.8×10^26(※10の26乗)グラムの質量が消えて4.3×10^-12(※10の-12乗)ジュールのエネルギーが解放されます(図22)。これは水素1グラムが核融合したときに、6.5×10^11(※10の11乗)ジュールのエネルギーが放出されるということです。

図表1:太陽内部の核融合反応同書より転載
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