太陽の中心温度は
“たったの”1500万度程度
つまり、太陽が出しているエネルギーをまかなうためには、1秒間に400万トンの水素が消えてヘリウムに変わっていることになります。
太陽がその誕生から現在まで同じように輝いているとすると(実際には誕生直後の太陽の光度は現在の70%程度)、放出されたエネルギーの総量は5.7×10^43(※10の43乗)ジュールという膨大な量になります。
しかし、これほど膨大なエネルギーを作り出すためには、現在の太陽の質量のたった4%の水素がヘリウムに変わるだけでよいのです。核融合によるエネルギーがいかに効率的で巨大かわかるでしょう。
実はこの説明はかなり単純すぎて、量子力学との関係はいまひとつ不明確です。量子力学と太陽の核融合の関係、それには太陽の中心温度がたったの1500万度程度にすぎないということが絡んできます。
水素の原子核である陽子は、もちろんプラスの電荷をもっています。たとえば磁石の同じ極(S極とS極、N極とN極)が反発し合うように、電荷もプラス同士の間には強い反発力が働きます。にもかかわらず陽子同士を融合させるには、動き回っている陽子同士に勢いをつけて(非常に速い速度で)ぶつける必要があります。
勢いをつけるためには周囲を高温にすればよいのですが、1500万度程度では勢いはまったく不十分なのです。陽子同士の間に高い壁があるようなものです。この高い壁をクーロン障壁と呼びます。
太陽の「低温」核融合を
可能にしているトンネル効果とは
1920年代にはすでに、太陽をはじめとする恒星のエネルギー源として核融合反応が提唱されていたのですが、この壁のため星の中では起こらないだろうと思われていました。
しかし量子力学の知見によれば、陽子はわずかな確率ですが、この高い壁をすり抜けることができるのです。これをトンネル効果と呼びます(図23)。

拡大画像表示