ある週刊誌に、『美しく逝きたい』という特集があり、そこに紹介されているある女性は、あの世で亡き夫に会うことを楽しみにして、いつもきれいな服を着て、化粧もきちんとしていたという。ほんとうにあの世で夫に会えるのなら、死ぬのも悪くない。いや、むしろ早く死んで再会を早めたいと思うのではないか。そうはならないのは、やはりどこかであの世の存在を信じ切っていないからだろう。

書影『死が怖い人へ』(久坂部洋、SBクリエイティブ)『死が怖い人へ』(久坂部羊、SBクリエイティブ)

 あの世を信じることは、死の恐怖を紛らせる一手段なのかもしれない。信じることで恐怖が紛れるのなら、それはそれで悪くはない。一種のプラセボ効果とも言えるが、死が怖くて仕方ない人には有効かもしれない。

 あの世の存在を信じていない人には、あまり死の恐怖も感じていない人も少なくないように思う。あの世がないなら死んだら終わりで、後顧の憂いなしというところだろうか。憂うべきことがあっても、自分自身はわからないので気楽ということだ。

 あの世を信じている人は、実際に死に直面したときも、信じ続けることができるだろうか。直前になってちょっと待てよ、ほんとうにあの世はあるのかなどとぐらつくと、かなり不安になるにちがいない。

 信じるなら最後まで信じるべきである。