経済評論家の立場でみるとよりわかりやすいのがセブンの凋落です。井阪氏が社長だった10年間は、ある意味で海外の投資家からの突き上げに翻弄された10年だったように思えます。

 図式としては香港の物言うファンドからコンビニ以外の事業をとっとと整理して、グローバルコンビニ事業に注力するように圧力を受けます。その指摘に対して相乗効果の重要性を口にして反論します。

 しかし結局井阪社長時代にやったことは、西武そごう百貨店の売却であり、イトーヨーカドーの持ち分をファンドに売却したことくらいでした。つまり、井阪前社長はファンドの主張をよりゆっくりと達成した形です。

セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一前社長セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一前社長

 日本では物言う株主のことを悪くとらえる風潮がありますが、こういったファンド悪者論はある意味で一面的な議論でしかありません。企業価値を上げる経営技術という視点でみると、実は日本の伝統的大企業の経営者の多くはレベル1の能力しかもっておらず、一方でファンドがブレーンとして抱えるプロ経営者たちはその上のレベル2の視座で日本企業に変革を迫ります。

 ただ、外部の株主には別の弱点があります。情報が足りないのです。だから物言う株主の提案は資産売却による株主価値の向上提案が多い。そういった圧力への追随経営に徹したセブンでは、最終的に虎の子であるはずの北米のコンビニ事業も株価対策の視点から上場、つまり部分売却へと方針が変更されました。

日系大企業で外国人社長が
株価を下げる当然の理由

 さて、レベル2の経営者の話に入りたいと思います。