日産のエスピノーサ社長やセブンのデイカス社長は前任者と何が違うのか?それは過去の経歴の中でプロ経営者としての経験を積んでいる点です。

 アメリカのプロ経営者の場合、大学やビジネススクールを卒業後、比較的早い段階で役員につき、経営の中枢の仕事に携わるようになります。日本企業とは異なり、アメリカ企業の場合は特に現代的な資本主義のルールの中で会社の企業価値をどう上げていくのか、理論と手法を叩きこまれます。これがレベル2の経営者の基本的なバックグラウンドです。

 こう言うと、多くの読者の方は疑問を感じるかもしれません。

「エスピノーサ社長やデイカス社長が前任者とは違うレベルの社長だとして、なぜ冒頭でお話があったような形で企業価値が減少し続けているのか?」と。

 その理由は、ふたつの相反する力で説明できます。彼らはともに会社の利益を捻出するための方法論が身についている一方で、前任者と違い、社内政治的にはまだ弱い立場なのです。

 前任者は部品メーカーから徹底的にカネを搾り取ったり、売れるPB商品をつぎつぎと店頭に出したりするのは得意でしたが、企業価値を高めることは得意ではない。レベル1の経営者は基本的に目の前の問題解決型です。

 一方で後任の彼らはレベル2の特徴としてもっと広い視点で企業経営の方法論がわかっています。一方で日本人が圧倒的な多数を占める大企業組織の中では外国人はマイノリティであり、社内での政治的基盤は弱い。ですから組織から「条件付きの経営をせよ」と現実を突き付けられます。

 日産の場合は「ホンダや鴻海(ホンハイ)の子会社になるような終わり方はだめ。規模を縮小してでも自力で生き残れるようにしてほしい」という社内政治的圧力があると想定してこの状況を眺めてみると、エスピノーサ社長の役割が理解できます。