三木谷会長がバルサ戦を
開催したかった最大の理由
言うまでもなくサムアップは「やったぜ」を、飛行機は「日本へ向けて無事に出発」をそれぞれ意味していた。空港で離陸を見届けたバルセロナ関係者から連絡を受け、Xを更新した三木谷会長は、人脈をさらに横へ広げながらバルセロナ戦を実現させるまでの経緯を、有名映画にたとえている。
「ちょっとミッション・インポッシブル、という感じで難しいかなと思いましたけど、何とかなりました。安心したのは……飛行機に乗るまで。乗ったか、乗ったか、ラポルタ会長も含めて乗った、と」
万が一、そのまま中止になっていたら、バルセロナと神戸だけでなく、長年にわたって信頼関係を積み重ねてきたスペインサッカー界と日本サッカー界の関係にも大きな影を落としかねなかった。
「僕自身はそこまでは考えなかったけれども、もし開催されなかったら結果的に大騒ぎになっていたかな、と。神戸のクラブ創設30周年というよりも、日本全国のファン、特に子どもたちがすごく楽しみにしている試合だったので、何とか開催できてよかったです。本当によかった。それだけですね」
神戸のオーナーというよりは国際的ビジネスマンとして、強靱な意志と気力があり、思い切って行動する姿を表す「剛毅果断」ぶりを三木谷氏は短時間で実践した。しかし、サッカーファンからどれだけ英雄視されても、黙して語らず、というスタンスを貫きながら、こんな言葉をつけ加えるのも忘れなかった。
「こんなことがあるのかと思いましたけど、どのプロセスでどのようなミスがあったのかをもう一回、見直したいですね。繰り返しになりますけど、法的関係については弁護士といろいろと話し合いながら、韓国のプロモーターさんも含めて、という形になっていくのかな、と思っています」
本稿執筆時点でもヤスダグループは公式ホームページなどでいっさい声明を出さず、問い合わせ窓口にメールを送っても返信はなく、トップの安田氏も公の場に姿を現していない。大仕事を終えた三木谷氏は、今度は企業経営者の顔を前面に押し出しながら、責任の所在をしっかりと追求していく。