このように、1つの分野にとどまるのではなく、少しずつ親和性のあるキャリアの軸を広げていくことで、人事領域で掴めるキャリア選択肢が増え、視野も広がりました。

「他の選択肢がないから現職に留まっている」状態と、「他にも選べる選択肢があるが、今の会社にいる」状態では、同じ「現職にいる」状態でも、その価値や働く意欲はまるで異なります。

 会社の都合に縛られたキャリアではなく、どこでも通用するキャリアを築くためには、自分が市場の中でどう位置づけられているかを常に考えることが必要です

会社内でキャリアを積むより
市場で評価される自分になる

 かつては「就職」より「就社」への動きが強く、会社の都合に合わせたジョブローテーションが行われ、その会社でしか通用しないキャリアが形成されやすい環境でした。

 しかし今は、どこでも通用するキャリアを築くために、「市場の中の自分」を考える時代です

 会社の中だけでキャリアを考えるのではなく、市場での自分の価値に目を向け、今の会社に留まる理由も含めて、自分自身のキャリアを見直す必要があります。

「選べる自分になる」というのは、単に転職先を選べるということだけではなく、働き方やキャリアの方向性、ライフスタイルにおける選択の自由度を高めることを意味します

 決断のタイミングは突然やってくるものです。何か起こってから慌てて後悔しないために、今から「選べる自分」になる準備を始めましょう。

経験を分解してこそ
本当の能力が見えてくる

「選べる自分」になるための第一歩は、過去の経験を細かく分解し、その経験を通して得た能力を正しく理解することです。経験と能力は混同されがちですが、異なるものです。その違いをしっかりと認識することが、効果的なキャリア戦略を立てるための基礎となります。

 ここでは、経験と能力をそれぞれ次のように定義します。

・経験=「実際にやったこと」、つまり「過去に携わった業務そのもの」
・能力=「経験を通じて得た力」や「結果を出すために必要な力」