その価値観に基づいて求人企業を探し、面接でもそのような環境があるかどうかを確認。結果、同様の風土があり、これまでの経験も生かせるECの物流・在庫管理職に転職を決めました。また、Bさんは、いずれ実家がある故郷に帰るというご希望もありました。その企業にはリモートワーク制度があり、生活の変化に応じて働き方を柔軟に変えられる可能性があることも、入社の決め手となりました。年収は約50万円ダウンとなったものの、満足度の高い転職となったのです。

誰かに話を聞いてもらうことで思考を整理していく

 AさんとBさんの転職活動の進め方の違いをご紹介しました。お二人の事例からもわかるように、転職に際しては、目指したい生活・キャリア・仕事を明確化したうえで転職先を検討するアプローチもあれば、実際に活動を進めながら自己理解を深めた結果、フィットする企業に出合えるケースもあります。

西山さん顔写真西山知壱(にしやま ともい)
リクルートエージェント キャリアアドバイザー
新卒では別の企業へ入社し、リクルート(現インディードリクルートパートナーズ)に転職。やりたいことが明確でなかったころにお世話になったキャリアアドバイザーとの出会いをきっかけに、「人の人生を好転させるような気づきを提供したい」との思いから入社を決意。現在は求職者一人ひとりに寄り添い、キャリア選択をサポートしている。

 現在の業務や今後のキャリアに対して漠然とした不安や迷いを感じた際には、まずは自分自身が取り組みやすいと感じる方法で、最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。一人で思い悩むよりも、第三者との対話を通じて思考が整理されることも少なくありません。他者の視点に触れることで、新たな気づきを得られる可能性もあります。転職支援の専門家はもちろんのこと、身近な家族や友人でも構いませんので、まずはご自身の考えや想いを言葉にしてみてはいかがでしょうか。

 少なくない方が悩まれているのですが、転職活動をして内定をもらったからといって、必ず入社しなくてはいけないということはありません。実際内定まで進んだところで「やはり転職しない」という決断をされる方は少なくありません。転職活動を通じてさまざまな企業を見たことで、現職の魅力に気づき、もともといた職場で以前よりモチベーション高く働けるようになる、というケースもあるのです。

 転職する・しないにかかわらず、まずは転職活動をしてみるのも一つの方法です。そして面接に臨む際には、「評価をされに行く」ではなく、「自分に合う企業かどうかを見極めに行く」という意識を持つことで、納得感が高い選択へつながるでしょう。

 本連載では、次回以降もさまざまなキャリアアドバイザーが20代・30代の方々の転職事例をご紹介していきますので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。