日本のジェンダーギャップはなぜ埋まらないのか
時代とともに女性たちのキャリア意識が変化しているなか、日本における女性の社会進出を考えるうえで、2025年は節目の年といえる。1985年制定の男女雇用機会均等法(均等法)から40年、2015年成立の女性活躍推進法から10年──日本は諸外国に比べて、女性の社会進出が遅れているといわれるが、均等法以降の40年の間に、働く女性を取り巻く状況は変わったといえるのだろうか。
大内 40年前と比べれば、状況は変わってきたと思いますが、変わっていない部分もまだ多く残っています。私は、均等法施行から3年後の1989年・春に社会に出た、いわゆる「均等法第一世代」です。新卒で総合商社に入社したのですが、「機会均等」のもと、総合職は男女の区別なく、深夜残業や休日出勤も当たり前というハードな働き方をしていました。
しかし一方で、総合職でも女性だけはお茶くみやコピー取りといった、いわゆる一般職女性の業務も課せられていたり、重要な会議には出席させてもらえなかったりと、「均等」とは言い難い面もありました。いま思えば、それまで、「女性の仕事は男性社員のサポート」という男女別雇用管理でずっとやってきたわけですから、上司としても、女性をどう「均等に」参画させたらよいのか、という手探りの部分もあったと思います。
学校教育では、1年、2年、3年と学年が上がれば、男女の区別なく段階を追って学びの機会が与えられますが、社会に出たら、決してそうではありません。同期で入社しても、男女では配属も仕事の内容も昇進の機会も決して均等ではないという現実があります。そうした実情への違和感は、私が女性のキャリア形成をテーマに研究者の道へと進む原動力になりました。
均等法は、その後の改正で、採用・配置・昇進・教育訓練における性差別を禁止するようになり(*1)、現在では職場でのあからさまな女性差別は減ってきたように見える。しかし、諸外国と比べれば、日本の男女格差は依然として縮まっていない。2025年6月に発表された「ジェンダーギャップ指数」(*2)では、日本の順位は調査対象の148ヵ国中118位。G7では最下位で、韓国(101位)や中国(103位)を下回った。なかでも、政治分野(125位)と経済分野(112位)における順位が低く、女性の閣僚や管理職の割合が少ないことや男女の所得格差が大きな要因になっている。
*1 均等法制定時、これらは「努力義務」や「一部禁止」にとどまっていた。
*2 世界経済フォーラム(WEF)が発表している各国の男女格差を評価するための指数。経済・教育・健康・政治の4分野のデータから算出される。
大内 「男は仕事、女は家庭」といった日本的な性別役割分担の意識はだいぶ変わってきました。この意識変化は学校教育の影響が大きいと思います。家庭科が男女必修になったのが、1993年(中学校)、1994年(高等学校)のことですから、現在の40代半ばを境に世代間のジェンダー意識は変わってきています。授業でSDGsについて学んでいるZ世代では、「ジェンダー平等」はもはや当たり前でしょう。
とはいえ、海外と比べると、日本の組織は旧態依然と言わざるを得ません。古いジェンダー意識から抜け出せない企業も多く、特に経営層の多くを占めている50代以上の世代意識は根強いように思います。トップの意識が変わらなければ、本質的な女性活躍の推進は難しいでしょう。