ハーバード大学などの名門大学のビジネススクール(経営学大学院)を出ていても、就職できない学生が年々増えているという。新卒で就職に失敗すると、その後ホワイトカラー職に戻ろうとしても「履歴書の空白」が障害となることも起こりえる。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-04/SSJU9LDWLU6800

 日本企業では新卒採用が中心になっているが、アメリカ企業の経験者採用重視の姿勢はあまり変わっていない。日本の場合、新卒は経験がないことを前提にしており、社員教育をほどこし、戦力にならなくてもある程度我慢して人材を育てることが多い。

 育成型の新卒採用を行うアメリカ企業はまだ少ないが、経験者の採用が難しくなれば、いずれ日本型の新卒採用を取り入れざるをえなくなるのではないだろうか。

大量解雇を避ける
企業が増えている背景

 アメリカ企業にも変化が見える。先に示した2022年寄稿の記事でも述べたように、コロナ禍で仕事量が減ったときでも、大量解雇をおこなわず、雇用をそのまま温存した企業がかなり目立ったのだ。

 たとえば、コロナ禍で多くの航空会社が大量解雇を行い、需要回復後に人手不足に直面して乗務員不足で便を減らさざるを得なかった中で、レイオフを控えたデルタ航空は業績の回復が早く、従業員満足度も高まった。

 また、ウォルマートやターゲットは従業員の定着を重視し、教育制度や昇進機会を整備し、従業員を「資産」とみなす方向に舵を切っている。

 さらには、人材の流動性が高いと考えられてきたIT業界でも変化がある。AIやクラウド人材は希少で、解雇後に再確保が難しいために、シリコンバレーでも「解雇してすぐ雇う」という従来型の雇用スタイルは少しずつ崩れつつある。

 人材不足に悩む航空業界などでは、ユナイテッド航空のように大量の新卒採用をして、ジョブトレーニングに力を入れる企業も出始めている。

 ただし、これはやむにやまれずの方法であり、このやり方をとる企業が増えたことでアメリカ特有のダイナミズムを奪い、生産性を下げているという指摘もある。

米雇用は回復も生産性は低下? その訳は

 その背景には、少子化が進み移民が制限されるようになって、各産業で労働者不足が起こるようになったことがある。新卒採用ができる業界はまだよいが、できない業界は万年人手不足を被るところも出始めている。