「高校生記者シリーズ」では様々な恐怖の形を実験できました。特に気に入っているのが「うばわれた心臓」(1968年)です。生きながら心臓を取り出される手術シーンの怖さは、後の「洗礼」にもつながっています。このシリーズは、「恐怖」というタイトルでコミックス化(サンデーコミックス・秋田書店、1971年)されました。

「うばわれた心臓」から。生きたまま心臓を摘出される恐怖を描いた(c)楳図かずお 拡大画像表示

「ティーンルック」(主婦と生活社)の仕事も楽しかった。ちょうど「少女フレンド」の仕事と入れ替わる形になって、編集長は井上清さんでした。

――「ティーンルック」は、やはりグループサウンズ人気に乗った「お嬢さんの週刊誌」として1968年に創刊。もう1本の連載マンガは石ノ森章太郎さんの「千の目先生」だった。当時の少女向けヤング誌で、楳図さんと石ノ森さんが人気の双璧だったことがうかがえる。

 僕のタッチも「かわいい」から「きれい」に移行している時期で、ティーン向けの媒体にマッチしたと思います。「蝶の墓」(1968年)は自信作です。

――めぐみは幼い頃から異常な蝶恐怖症だった。黒い蝶を見ると不吉なことが起こるのだ。母は赤ん坊のめぐみを抱いてベランダから転落死しており、めぐみは自分が母を死なせたという自責にさいなまれていた。父の再婚相手として新しい母がやってくるが、めぐみはその女性になじめない。やがて事件が起き、めぐみがなぜ蝶を恐れているのか、なぜ母が死んだのか、全ての真相が明らかになる。楳図さんの作劇のうまさが光るサイコサスペンスの傑作。

「蝶の墓」から。主人公の丘ノ上めぐみは蝶が病的に怖い(c)楳図かずお 拡大画像表示