
JR東日本も全くの無策というわけではなく、9月から「えきねっと」のIDは「Tabi-Connect」と同様JRE IDに統一するなど、増えすぎた予約サービスのID・パスワードの統一へ動いている(27年めど)。28年には座席予約から決済、乗車まで管理を全てSuicaアプリで行えるようにする方針だ。
なお、Suicaは「2万円以上はチャージできない」「エリアをまたぐ場合は運賃計算ができず改札を出ることができない」など長距離利用に不便だが、これらも順次改善していくという。
他方、Suicaを含む全国交通系ICカードには別の問題も抱えている。昨年、熊本県のバス・鉄道事業者が高額なコスト負担を理由に全国交通系ICカードの利用から撤退したのだ。今後もコスト負担を気にする事業者は出てくるだろう。次の撤退事例が現れる可能性は否定できない。
なぜJRの予約サイトは複雑なの?
国鉄時代から続く古いシステム
そもそも、なぜJRの予約サイトは複雑かつ乱立してしまったのだろうか。背景には国鉄時代から続く、クローズドなシステムの影響が大きい。
座席予約システムは、「マルス(MARS)」と呼ばれる。1960年の運用開始以来、何度か改修し、現在は2020年に稼働開始した「マルス505」を使っている。しかし、マルスの利用には専用機器が必要で、全国のみどりの窓口や旅行会社なら使えるが、一般利用者が使えるものではない。
その他、国鉄時代のパソコン通信の仕組みから発展させた「CYBER STARTION」も存在する。こちらはエリアに関係なく、切符の予約・受け取りが可能だ。しかしCYBER STATIONは固定電話時代のプッシュホン予約(2013年終了)を踏襲した非常に古い仕組みだ。そのため、発車日2日前までしか予約できず、割引も効かず、オンライン決済ができないのが致命的で、現代のWEBサービスの水準に達しているとは全くいえない。
国鉄の遺産を引き継ぎながらも、JR各社はネットの台頭に追われ、慌てるように各自が予約サイトを展開してきた。時代の流れに合わせたとはいえ、例えばJR東日本は自社内で「のってたのしい列車予約」ポータルや「サフィールPay」などの新サービスを矢継ぎ早に登場させた結果、サイトが乱立したのは考えものである。