エイチ・アイ・エスは売り上げの大半を日本人の海外旅行で稼ぐが、少子化で市場そのものが縮小に向かっている。次の成長を目指し、リスクを取って注力するチャーター便と海外ビジネスの成否を分析する。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

 旅行会社のエイチ・アイ・エスが海外市場で攻勢に出る。7月から9月まで(その後、会社側は8月4日~に延期を発表)タイの子会社「アジア・アトランティック・エアラインズ」が、東京および大阪~バンコクのチャーター便を毎日飛ばす(10月以降は未定)。

 日本の旅行会社がチャーター便を飛ばすこと自体は珍しいことではない。だが、子会社でチャーター便を運航しているのは、エイチ・アイ・エスだけだ。

 世界を見渡せば、例えば世界最大手の旅行会社であるTUI(本社・ドイツ)は自らチャーター便を運航し、旅行ビジネスを行っている(下表参照)。売り上げ規模はエイチ・アイ・エスの5倍あり、M&Aでクルーズ船やホテルなどを傘下に持つ。

 TUIの旅行ビジネスは欧州人向けが中心で、夏のバカンスシーズンに旅行が集中する。そのため、チャーター機を自社で保有することによって機会損失を避けるのが狙いだ。

 他方、日本の旅行会社最大手のJTBはチャーター機を保有していない。リスクが高いためだ。現状では、行きは満席、帰りはガラガラ、あるいはその逆というケースは少なくない。そこで、特定の日に、チャーター便会社や航空会社のチャーター便を手配してパッケージ旅行商品を作る方法を取っている。

 では、なぜエイチ・アイ・エスはリスクの高いチャーター便運航に踏み切ったのか。座席供給数が足りないという構造問題への対処と、将来への成長につなげるという二つの理由からだ。