FRB利下げの“持続度”は?雇用の下振れリスク警戒も8月失業率は完全雇用近い「4.3%」労働省が金曜日に発表した雇用統計によると、8月の米国の雇用増加は鈍化し、失業率は4.3%と約4年ぶりの高水準に上昇した。写真はニューヨーク市のマンハッタンを歩く人々 Photo:Spencer Platt/gettyimages

雇用者増加数鈍化は米国の成長減速の表れか?
実体経済の弱さ反映しない「三つの要因」

 米国経済の現状や予想されている景気減速はどの程度のものなのか、の見方は雇用情勢に振り回されている。

 注目されてきたのは、非農業雇用者数の増加ペースの急減速だ。非農業雇用者数の増加は3カ月移動平均でみて年初1月は+23.2万人だったものが、直近8月にはわずか+2.9万人となった。

 また、9月に発表された雇用者数のベンチマーク改訂暫定値では、2024年4月から25年3月にかけての雇用者数の増加は、現在発表されている数字から91万人下方修正される見込みとなった。これは、表面的には今年3月までの1年間の米国の労働市場の動きがこれまで認識されていたよりも強くなかったことを示す。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、8月の雇用統計とこのベンチマーク改訂を受けた形で、9月16、17日の連邦公開市場委員会(FOMC)で25bpsの利下げに踏み切った。パウエルFRB議長は、会合後の記者会見で「雇用情勢はもはや堅調(“Solid”)とは言えない」「インフレ上振れと雇用下振れのリスクのバランスが変化した」としたうえで、「今回の利下げは、この状況に対処するリスクマネジメント的な措置」と説明している。

 だが直近、8月の失業率は4.3%と依然、低水準で完全雇用水準に近い。新規の就業比率は大きく下がっているものの新規解雇比率は低いままだ。昨今の非農業雇用者数増加ペースの減速やその改訂から見えるものは、必ずしも実体経済の弱さの反映としての雇用創出力の衰えばかりではなさそうだ。

 その要因を簡単にまとめれば、(1)労働市場のダイナミズムの低下、(2)移民流入の減少による労働力供給の急減速、(3)労働生産性の上昇―の3点が考えられる。

 関税だけでなくトランプ政権のさまざまな政策が、時にブーメランのように米国経済に複雑な影響を及ぼしている状況だ。