会談を前に握手する高市早苗首相(右)と植田和男日銀総裁=11月18日 Photo:SANKEI
25年に日本経済が成し遂げたこと
成し遂げられなかった「2つの課題」
2025年も間もなく終わろうとしている。25年に日本経済は何を成し遂げ、何を成し遂げられなかったのだろうか。
ファンダメンタルズの観点に立ったとき、日本経済が25年に成し遂げたことについては、次の3点が指摘できるだろう。
第一に、値上げ、賃上げ、利上げの「三つの上げ」のさらなる定着だ。
しばしば日本経済の低迷ぶりは「失われた30年」と表現されるが、実際に1990年代後半以降、何を失っていたのかというと、まさにこの三つの上げだったが、それぞれ25年も着実に進んだ。
第二は、設備投資の質的変化だ。これまでの設備投資はヒト(労働力)による利用を前提としていた。しかし、ここに来て、設備投資はむしろヒトを代替することを目的とし始めた。デジタル化投資、ソフトウエア投資、自動化投資、省力化投資などが該当する。
第三に、賃上げの同調性だ。最近はほとんど耳にしない表現だが、「日本的経営」の特性の一つとして企業別労働組合が挙げられる。日本では、労働組合が(産業別ではなく)企業別に組まれていたことで、賃上げ自体も個社の意思決定が軸となっていた。しかし人手不足の下、賃上げに企業間での「同調性」が生まれつつある。
ただ、値上げの実態を見ても、コメ不足や円安による食料品価格の上昇が大きい。企業が賃上げ分を価格転嫁し売り上げを伸ばし、さらに賃金が上がるという賃金と物価の好循環が達成されているわけではない。
欧米では、人件費が多くを占めるサービス業などの賃上げがけん引する形でインフレが進むが、日本の値上げの要因はそうではなく、従って個人消費の勢いはなお弱いままだ。
利上げを進めてきた日本銀行も、12月の金融政策決定会合で追加利上げをした後は、26年は食料品・エネルギー価格の上昇が落ち着くことから、利上げを1年程度休止することになるだろう。







