10月24日、所信表明演説を行う高市早苗首相。 Photo:AFP=JIJI
重要なのは物価上昇を上回る賃上げ
高市首相「強い経済」実現でも本質課題
高市早苗新首相は、10月24日の国会での就任後初めての所信表明演説で、当面の経済政策の最優先課題として物価高対策を挙げ、ガソリン税の旧暫定税率廃止(ガソリン減税)や電気・ガス料金補助、自治体の家計支援策や看護・介護職員などの待遇改善を支える地方交付金の拡充などの具体策を掲げた。
しかし、多くの国民にとって物価上昇に対しては減税や一時的な補助よりも賃上げの方がはるかに大きな恩恵がある。経済を回して、賃上げを物価上昇に追い付かせることを考えない物価高対策は成り立たない。
物価上昇の実態も輸入インフレ、つまり資源価格や原材料の上昇や円安を起点とした価格転嫁が主因だ。日本銀行が順次追加利上げをすることで、輸入インフレの圧力を弱めていくと同時に、「高い賃上げ継続」で、実質賃金を安定的にプラス1%程度にしていく政策方針は、誰が日本の首相になろうとも、継続していくべきものだ。
特に、現在はトランプ関税が徐々に企業収益の重しになってきている。
貿易統計の2025年4~9月のデータを見ると、対米輸出額は前年比▲10.2%と大きく減少している。数量ベースで見ると、25年6月は前年比▲1.6%、7月同▲2.3%、そして8月同▲12.0%、9月同▲13.5%と急減している。自動車やバス・トラック、半導体製造装置、電子部品の前年比マイナスが大きく目立っている。
こうした輸出減は、製造業の25年度上期決算にも相応の打撃を与えるだろう。11月前半に発表される半期の業績によって、株価や12月に支給される冬のボーナスにも影響するだろう。
連合は23日、26年春闘について、34年ぶりの高水準となった今春闘と同じ全体の要求水準を「5%以上」、中小企業は「6%以上」とする賃上げ目標を決めたが、トランプ関税の影響は26年春闘交渉にも暗い影を落とす。
「積極財政」や緩和維持が売り物の高市経済政策だが、25年度までの“大幅賃上げ”のバトンを、きちんとつないでいけるかは、首相が目指す「強い経済」実現に向けても根本的な課題になる。







