FRBパウエル議長Photo:Anadolu/gettyimages

「雇用悪化リスク」管理のための利下げだが
市場は10、12月、来年1月の連続利下げを予想

 米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16~17日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を9カ月ぶりに0.25%引き下げ、4.0~4.25%とした。

 同時に公表された政策金利ドットチャートの中央値を見ると(図表1)、年内さらに2回、来年中1回の利下げを示唆しており、市場は10月、12月、来年1月と連続利下げを見込んでいる。

 今回の利下げについてパウエル議長は、「ある意味、リスク管理のための利下げ(a risk-management cut)と考えてよい」と記者会見で述べている。そのリスクとは、言うまでもなく8月の雇用統計で浮き彫りとなった雇用の下振れリスクのことだ。議長は「われわれの政策においてそれを考慮に入れるときが来た」と指摘し、リスクが現実化する前に手を打ったことを強調した。

 とはいえ、8月の失業率は4.3%とまだ低い。過去1年間の最低値は今年1月の4.0%であり、0.3%高いだけだ。金融政策は効果が出るまでタイムラグがあることや、米国の失業率は景気が悪化すると指数関数的に急上昇する傾向があることを踏まえると、今回のFRBの判断は適切といえる。

 しかし一方で金融を通じて市中に供給されているマネーストックはピークを更新続けており、企業財務面から見たレバレッジも拡大に転じる兆候がうかがわれている。FRBが利下げ再開を決めた翌18日の米株式市場ではダウ工業株30種平均などの株価指標がそろって史上最高値を更新した。

 リスク管理的な利下げをやればやるだけ、今度は逆に上振れリスクへのケアが重みを増すことになる。