結果、B班はJAXAの管制チームが「頭脳明晰なほうを集めた」と発言しているにもかかわらず、5日目にはA班やC班に比べて明らかに活動量が落ちていました。

 これは水面下で行われている主導権争いのせいで、チームが機能不全に陥っていることへの危険信号とも受け取れます。

 2名の選出方法を「点数制に」と主張したのは溝口ですが、ケンジ以外のメンバーはそれを「公平」だと判断しました。メンバーの脳内には、この時点ですでに「競争」という2文字がインプットされてしまったのかもしれません。

ジャマなのは真壁だ同書より転載(c)小山宙哉/講談社 拡大画像表示

常にみんなで話し合ったA班は
難題をうまくクリアしていく

 さて、六太のいるA班はどうでしょう?

 最年長で温厚な性格の福田がなんとなくリーダー的なポジションにいるものの、B班ほど明確ではありません。そのときどきで発言した者の意見が取り入れられ、物事を決めていくスタイルです。

「まずはもう少しお互いを知るためにも改めて自己紹介から始めてみようか」

 福田のこの提案をメンバーが自然と受け入れて、流れができていきました。これこそ、愚者風リーダーシップです。

 彼は、「現在時刻を推測する」という課題でも、ひとりだけ答えが違う六太に、「なぜそう思うのか?」を聞こうとしました。その結果、正解を導き出せたのです。さらに、2名の選出方法を無理やり決めなかったことで、個々の心理面での葛藤はあるものの、チーム内の競争意識は低く、序盤は課題に集中できています。

 六太は新田零次に課題で勝とうと奮闘していましたが、その理由が、新田に自分のことを「(日々人の)お兄ちゃん」ではなく「ムッちゃん」と呼ばせたいから……。あまりにほのぼのすぎて、ケンジのいるB班に放り込みたいくらいです。