ハードなのに満足度が高い
企業の共通点は?

 トップ20のうち、金融業界から4社、不動産関連業界から3社、コンサルティング業界から3社がランクインした。これらはいずれも比較的専門性が高く、一般的に金銭的報酬水準が高いとされる業界である。

 ハードワークな労働環境でありながらも、自身の市場価値を高める専門性を身につけられることや、高水準の報酬を得られることが、高い士気を保ちながら業務に取り組める理由となっていると考えられる。

 以下、ランクイン企業に寄せられたワークライフバランスに関するクチコミを見てみよう。

「ワークライフバランスは比較的取りやすい。しかし、それも条件付き。実際には、平均して月に40時間は残業しているし、そもそも事務作業に締め切り厳守なため昼食を取らない事もある」(業務・ゴールドマンサックス)

「ワークライフバランスに関しては、基本的に気にされる方は向いていないと思います。バランスの度合いで言うと、9割がワークの比重で、お金を稼ぎたいならどんどん働いていこう!のマインドになります」(戸建仲介・オープンハウス)

「ワークイズライフと捉えている方も多く、思う存分仕事を出来る環境にあるので、仕事がしたい方にとっては最高の環境だと思います」(M&Aコンサルタント・日本M&Aセンター)

 トップ20のOpenWorkにおける総合評価スコアの平均は、5点満点中3.43点と高水準である。ハードワークな環境下にありながらも、「社員の士気」をはじめとする他の評価項目においても比較的高いスコアを示している。

 その結果として、厳しい労働環境であっても「この会社で働くことに納得し、満足している」社員が多い傾向が見られる。それは以下のクチコミからも分かる。

「得られる営業力、給料共にギャップはなかった。認識しておくべきこと、としては、ワークライフバランスを求める方には合わないと言うことである。それだけハードな働き方ではあるが、見返りも十分にある」(営業・キーエンス)

「業務に関しては意欲さえあればいくらでも働ける環境である為成長したい人はガンガン挑戦できると思う」(SE・新プレクス)

「唯一無二の仕事も多く、社会へのインパクトを考えると、業務負荷を吹き飛ばすくらいの使命感、ミッション感を得られる職場です」(技術・経済産業省)

 今回、ハードワークな働き方でありながらも高い士気を保つ社員が多い企業を分析した。その理由として、成長実感や高報酬といった、努力に見合う「確実な報い」が得られる点が挙げられる。また、ワークライフバランスが必ずしも良好とはいえない企業であっても、企業全体の総合評価が低いわけではないことも明らかになった。

 OpenWorkに掲載されている企業の過去10年間の全体平均スコアを分析した研究によると、「働きやすさ」に関するスコアは改善傾向を示していた一方で、「働きがい」に関するスコアは下降傾向を示していた。つまり、働きやすい職場環境が必ずしも働きがいの向上に結びつくとは限らないという結果である。

 ワーキングパーソンが労働に求める真の価値とは、ワークライフバランスによって得られる「時間的な余裕」そのものではなく、「その時間を何に投じるか」という点にあるといえる。