rolling recession:
ローリングリセッション

「段階的景気後退」の終了に伴って、米国景気は底入れしたのか?

 米国経済の先行きについてウォール街では悲観論が支配的だ。トランプ米大統領による関税政策が暗い影を落としているからにほかならない。

 そんな中、逆説的な「ローリングリセッション(rolling recession)」という説が注目を集めている。それに従えば、米国経済がこれから進む方向は景気後退ではなく景気回復だというのだ。

 ローリングリセッションとは、業界ごとに時間差で(sector-by-sector at different times)景気が後退していくことから、経済全体が一斉に悪くならない状況を指す。「段階的景気後退」と表現してもいい。

 経済全体が急降下しないとなると、厄介な問題が出てくる。名目国内総生産(GDP)や雇用統計といった伝統的指標に頼っている限り、景気の実態をなかなか可視化できないのだ。

 ローリングリセッション説を唱えているのは、米投資銀行モルガン・スタンレーの主任投資ストラテジスト(米国株担当)、マイク・ウィルソン氏だ。9月上旬に同僚と共に顧客向けリポートをまとめ、次のように分析している(米「フォーチュン」誌より引用)。

 The economy has been much weaker for many companies and consumers over the past 3 years than what the headline economic statistics like nominal GDP or employment suggest.(過去3年間にわたり、多くの企業や消費者にとって米国経済の実態はとても悪かった。名目GDPや雇用統計といった主要経済統計が示す以上に。)