
首都圏における中学受験塾の王者、SAPIX(サピックス)の凋落がささやかれる今、難関校志向を売りとする「少数精鋭型」の中学受験塾の人気が高まっている。知られざる少数精鋭塾の神髄を各塾のキーパーソンへの忖度なしのインタビューで明らかにする連載『ポストSAPIX 中学受験の少数精鋭塾大解剖』#2では、ポストSAPIXの最右翼候補「中学受験グノーブル」に切り込む対談の後編をお届けする。(教育ジャーナリスト おおたとしまさ)
大手塾の模試の結果は「参考程度」
合否を見極められる講師を各校舎に配置
おおた 規模の小ささによるデメリットはどうやって補っているんですか。
盛田 割と母集団が大きいであろう模試を受けるとかですね。基本的には模試が多そうなところの日程は(授業を)空けてあって、「他塾さんのこういう模試もあるんで、受けていただくといいんじゃないでしょうか」っていう感じです。
おおた 各ご家庭の判断で他塾の模試を受けてもらって、その結果を提出してもらうわけですね。
盛田 でも模擬試験の結果ってね、やっぱり参考程度にしかならないんですよ。それは模試の主催者も分かってると思います。「まあ行けるでしょう」とか、「ちょっと厳しいね」っていうのは、模試に頼らなくてもだいたい分かるんで、私個人は規模が小さいことによるデメリットを感じたことはない。まあ、ただ、それは私自身が年を取っちゃって、それなりに大きい塾での経験もあるんで、体に染みてるだけかもしれない。
おおた 盛田先生に当たればいいけど、まだ経験が少ない先生が同じことできるかっていったら、そうとも限らないということですよね。そういう経験をお持ちの先生が、グノーブルにいま、どれだけいるんですか。
盛田 どの校舎にも絶対何人かいるように講師を配置していますから、そういう先生に全く当たらないっていうことはないと思います。

おおた 十分な見立てができる先生というのが、必ずどこの校舎にもいて、どの生徒さんの周りにもいるようになっていると。そんな中で若い先生にも経験を積んでもらうっていうことですね。
他塾との比較は難しいという前提で、それでもグノーブルの魅力を伺いたいので、ちょっと質問の仕方を変えるんですけども、グノーブルを選んでいるご家庭は、どういうところを評価してくれていると先生はお感じになっていますか。
盛田 それは大変難しいんですよ。保護者に聞いても、われわれにとって耳心地のいい返事しか返ってこないんですよね。うちの場合一つあるとすれば、たとえば学年が低いうちは通塾日数が少ないんですね。そうすると、習い事との兼ね合いで、曜日的にうちの塾が合ってるっていうパターンもあると思います。
それと、大手より小回りがいいんじゃないかって思われるとか。われわれとしては別にそれをウリにしてるわけじゃないんですけど。説明会とかでもうちくらいの規模だと講師が個性を発揮しやすくて、うまく話が伝わるということもあるかもしれません。単に近くの塾で合わなかったから結果的にうちに来られるパターンもあると思います。
でもまあ、私は日本人なんで、臆面もなく自分のことを宣伝するのは得意じゃありません(笑)。
おおた ちょっとしつこい気もするんですけど、グノーブルを牽引されている立場で、そうはいっても、「ここは負けたくない」と自負されている部分はありませんか。
盛田 「この子までここに入れる」っていうラインは他塾より広いと思いますよ。
おおた 他塾では「○○中学は無理でしょ」と思われる学力の子でも合格させるということですね。
盛田 中学受験を前提にした私立小学校がありますよね。毎年いろんな生徒さんを見ている小学校の先生が6年生の秋口くらいになって「この中学は無理だからほかを受けなさい」と言うケースでも、われわれから見たら十分に行かせられると思うことがよくあります。実際にこっちを信じてくれて受けた子とかは結構受かってるんですよ。小学校の先生は基本的に大手塾に通ってる子どもたちの過去の結果を見てアドバイスしているんだと思うんですね。
おおた 大手塾に通っている子たちのデータが小学校の先生の頭の中には入っていて、その基準ではちょっと難しいんじゃないのっていう学力でも、グノーブルだと合格できちゃうケースが結構あるよと。面白い話ですね。なぜそんなことが起こるんですか。