「どっちが強いか」という問いはここまで文明化された現代社会を生きていく上でなんの役にも立たないしバカらしいのだが、やはりロマンがあり、そこをないがしろにせずにすくい上げていくのが「最強王図鑑」である。すなわち大人も童心にかえって勝敗の行方を楽しみにできる。
そして、シュールさや試合中の過度なアツさは笑える。勝敗の行方をところどころ笑いながら楽しみにしたっていいわけである(馬鹿にするような笑い方をすると一緒に見ている子によくない影響があるかも知れないのでそのあたりは慎重に)。
余計なことを考えずに見ることができる点にセラピー的な効果を私は感じたが、しかもバトルの長さ自体は前後のあれこれを省けば5分ちょいくらいだから、実にサクッとお手軽に見られるのも忙しい現代人には好ましい。
そして大人が一緒に見て子どもと楽しみを共有すればコミュニケーションも知育も図れてなお好ましい……とこういうわけである。
口コミやSNSで保護者のネガティブなコメントを探してみたのだがあまり見つからなかった。「興味が強さなど一方向に偏るのではないか」「次々に新しい最強王の図鑑を欲しがるので1冊があまり深められておらず根気や学びの姿勢が育たないのでは」といった懸念は見られたが、子どもの「最強王図鑑」への傾倒はおおまかにはポジティブに捉えられているようである。
名作「アンパンマン」について
大人たちが本気で考察
「子ども向けコンテンツだが大人も本気で楽しんでいるもの」は現代にいくつもあるが、「強さ」にフォーカスしたものとしてその中から「アンパンマン強さ議論スレ」を例に取りたい。これは、最近はあまり活発ではないようだが10年くらい前からネット掲示板で続けられていた本気の考察コミュニティである。
幼児向けアニメを真面目に考察するナンセンスさをネタ的に面白がる姿勢はコミュニティ参加者の間で暗黙のうちに共有されているが、それを口にすると野暮になるので一見したところ議論はいっそう真剣味を帯びていくという、特殊で興味深い環境である。
そこではジャムおじさんやバタコさんなどの非戦闘員もランキングされ(ともに名犬チーズより弱いランク)、アンパンマンの顔交換について戦術的にどう評価するか、といったことが議論され、ネタスレとしてかなりの深まりを見せていた。







