アンパンマンは日本人の多くが知るアニメなので議論に参加できる母数が限りなく多く、また幼児向けアニメとしての設定がはらむざっくばらんさ・曖昧さがかえって想像の余地を生み、考察をより活発にした……という背景が、アンパンマン強さ議論スレにはあった。
「最強王図鑑」の知名度はまだアンパンマンほどではなく、強さは公式が勝敗という形で出していくので読者・視聴者が想像を巡らせる余地はそこにはない。また、「アンパンマン強さ議論」はすること自体がナンセンスで面白いのに対し、「最強王図鑑」はコンテンツの方向が最初からナンセンスで面白いので、ここも両者趣きが異なる。
「最強王図鑑」が発揮する
現代だからこその強み
以上を見てみると、「最強王図鑑」は「アンパンマン強さ議論」と成り立ちがだいぶ異なるので、同じ過程を辿っての深まり方や広がり方はしないはずである。
ただアニメ版でいうなら本編の展開が力技というかゴリ押しというか、制作者の「ヨイショー!」という声が聞こえてきそうな勢いで話を進めるシーンが見受けられて(そもそもコンテンツのコンセプトが勢いの塊みたいなものなので当たり前といえば当たり前)、視聴者はそこに議論の余地を見出すことができる。
「あの技であんなに体力を削るのは制作サイドのご都合主義ではないか」「あの技ではなく、あの生き物の別のあの技が炸裂していたら勝っていたのでは」などであろうか。
といった具合に考察の切り口もあるが、「アンパンマン強さ議論」の方は本編アニメが取り扱っている哲学的テーマをもっと大人の目で考察することでも広がりを見せていた。たとえば「アンパンチは暴力に該当するか」「ばいきんまんにとっての敗北とは何か」などである。「最強王図鑑」には出し難い深みである。
しかし「最強王図鑑」は「アンパンマン強さ議論」とは別の、現代だからこそ発揮できそうな強みがある。「最強王図鑑」はややこしくなく、見てその場で瞬間的に楽しめる作りになっているので、配信や同時視聴、SNSでのリアルタイムでの感想のシェアなどで面白さを共有しやすい。
「アンパンマン強さ議論」がちょっと知的な考察ゲームなら、「最強王図鑑」は見ているその場で熱狂できるスポーツ観戦のようなものなのである。やはり、巨大な恐竜に立ち向かう劣勢のワシが急に巨岩を持って空から飛来すれば多くの人が「おおー(笑)」となる。あの面白さは「最強王図鑑」の真髄をひとつ代表している。
アニメ「最強王図鑑」は、子どもと楽しみたいコンテンツを探している大人のみならず、ちょっと5~10分時間が空いた時に気分転換したい大人にも勧めたい。







