岩手県一関市厳美町では、自宅の庭で67歳の男性が死んでいた。引っかかれ噛みつかれた跡があったのでクマに襲われたのではないかと見られている。すぐそばでは、飼い犬も殺されていた。

 秋田市雄和萱ヶ沢でもクマの目撃情報があった後、田んぼ近くの側溝でかなり損傷の激しい女性の遺体が見つかった。

 このような形で人間を恐れず、人間に自ら襲いかかるようなアーバンベアを捕獲して山に返したところで、しばらくしたら市街地に舞い戻り、また同じ凶行を繰り返すだけである。

 一度でも「人間の味」を知ってしまったクマが繰り返し人を襲うように、「人間密集地帯の味」を知ってしまったクマは、市街地から離れられず繰り返し犬や人間を襲い続けてしまうものなのだ。

 アーバンベア対策には残念ながら「駆除」という選択肢しかないということがわかっていただけたと思うが、これはあくまで「対症療法」に過ぎない。これ以上、被害を広げないためにも「原因療法」に取り組む必要がある。

 つまり、山の中に生息しているクマに人里に近づかせない、アーバンベア化しないような対策を講じていくのだ。

クマ対策は
まず「○○の駆除」から

 では、どうするか。自治体によっては人里とクマの生息地に緩衝地帯をもうける「ゾーニング」を進めたり、オオカミ型のロボットが眼を赤く光らせて、鳴き声で威嚇をする「モンスターウルフ」の導入を進めたりしている。

 しかし、個人的には国をあげて「シカの駆除」に力を投じるべきだと思っている。

 なぜかというと、クマが人里に下りてくるようになった要因のひとつは、シカの「爆増」にあるからだ。

 よく言われるが、山で人間を襲ったり、人里まで下りたりしてくるクマはわりと小さい。あまりいいものを食べていないのだ。

 わかりやすいのは少し前、岩手県岩上市の温泉旅館の露天風呂を清掃していた60歳の男性を襲って殺害したツキノワグマだ。男性の遺体近くで駆除されたこの個体は、冬眠直前にもかかわらず、かなり痩せていたという。猟友会の会長がメディアに答えたところでは、この時期の一般的な成獣の場合、身体には5センチくらい脂肪がついているものだが、それが全くなかったという。