興味深いことにこの検査では、過剰診断や治療にともなう合併症などのデメリットが具体的に論じられている。
メリットの評価は、前立腺がんでの死亡率を低減させる効果にもとづいている。PSA検査についての研究事例には、ランダム化比較試験を用いた研究事例が3つある他、その3つの中から2つの研究事例を総括した研究が1つある。
さらに、それらよりも質が落ちる研究も紹介されている。「質が落ちる」と言ったのは、対象者が受診者と非受診者にランダムにグループ分けされていないため、因果関係の評価の点で疑問符がつくからだ。
前立腺がんを放置しても
84%は死に至らない!?
結果として、ランダム化比較試験の研究事例のほうは、総括した研究も含めて、受診者の死亡率が非受診者と比べて低下していたわけではなかった。だが、質が落ちる研究事例の中には、受診者の死亡率が低下したと報告するものもあった。
たとえば、受診者と非受診者を長期的に調査したところ、受診者のほうが前立腺がんの死亡率が低かったが、全死亡率(すべての死因を含めた死亡率)でも受診者のほうが低かった、という研究結果があった。
しかし、PSA検査の受診によって前立腺がん以外の死亡率も低下するとは考えにくいので、対象者の特性(健康への意識の高さなど)の違いによる可能性が排除できず、検診の効果とはいえないと判定されている。
これらの結果から、PSA検査には前立腺がんの死亡率低下というメリットを明確に示す証拠は不十分である、という評価となった。
デメリットの評価では、過剰診断、精密検査にともなう偶発症、治療にともなう合併症の3つが検討された。PSA検査は一般的な血液検査でできるので、検査すること自体にはデメリットはないとされた。また、乳がん検診と同様に、費用はここでは検討対象には含まれない。
過剰診断については、いくつかの研究事例から、PSA検査で前立腺がんと診断された人のうち、27~84%が該当するとの推定結果が紹介されている。
84%というのは驚くべき数字だ。







