検査のメリットを享受できるのは
100人のうち4人だけ?
検診ガイドラインから離れて、PSA検査についての興味深い試みが2つあるので紹介しよう。
1つは、米国の専門機関である予防医療専門委員会(U.S. Preventive Services TaskForce)が作成した、受診を判断するための一般向けツールである。そこでは、55~69歳の男性1000人が受診したときに受けるメリットとデメリットが、図8-2のように示されている。
同書より転載 拡大画像表示
PSA検査を1000人受診すると、240人は精密検査が必要となり、このうち100人が前立腺がんと診断されるが、そのうち、20~50%は過剰診断である。
がんと診断された100名のうち80名が手術か治療を受け、結果として、5名が前立腺がんで死亡するが、1名が前立腺がんによる死亡を回避し、3名がほかの臓器への転移を回避できる。
つまり、メリットを享受できるのは、死亡を回避できる1名と、転移を回避できる3名である。一方で、勃起不全が50名、15名が尿失禁といったデメリットを受ける。
PSA検査受診によるメリットとデメリットの大きさを一目で見ることができ、検査を受けるかどうかを判断するうえで、参考になる図である。
もっとも、検診ガイドラインの研究事例で見られたように、PSA検査のメリットやデメリットの大きさがばらついていたことを考えると、このように数字を単純化できるのか、といった疑問はある。
患者を3つのグループに分けて
10年間追跡した結果
もう1つの試みは、「積極的監視」(active surveillance;「意図的監視」ともいう)である。
これは、PSA検査で前立腺がんと診断されたあと、がんを治療せずに慎重に監視しつづける、という方法である。







