激辛食品の指標となる
スコヴィル値という基準

 テレビやSNSなどでよく、いわゆる「激辛食品」を食べてみせるというチャレンジを見かける。

 限界を超えたものを食べることが新たな「エンタメ」として確立したわけだが、それによって、普通に食べる分には問題なかったものに新たなリスクが発生してしまったともいえる。

 実際に2024年7月、東京都で激辛ポテトチップスを食べた高校生14人が、体調不良で搬送されるという「事件」が発生した。また、米国では2023年に、「激辛チャレンジ」に挑んだ14歳の少年が、数時間後に死亡した。

 辛さの指標には「スコヴィル値」というものが使われる。これは1912年に化学者のスコヴィルが、トウガラシの抽出物を砂糖水で薄め、辛さを感じなくなったときの希釈倍率で、辛さを表したことに由来している。つまり、人間の感覚を用いた官能試験で評価するのだ。

 通常のトウガラシ粉末のスコヴィル値は、3万~5万程度である。だが、搬送された高校生が食べた激辛ポテトチップスには、スコヴィル値100万のブットジョロキアという品種のトウガラシが使用されていたようである。

 ちなみにトウガラシもピーマンもパプリカも、植物種としては同じもの(学名Capsicum annuum)で、中南米原産のトウガラシがヨーロッパに広がり、品種改良で辛さをとったものがピーマン、さらに甘く肉厚に改良されたものがパプリカだ。

タバスコの瓶の口が
少量しか出ない理由

 国際食品規格を策定しているコーデックス委員会によるスパイスの分類では、スコヴィル値900以上のものをトウガラシ(チリペッパー)、480以下のものをパプリカと呼ぶ(その中間は「ホットパプリカ」と呼ばれる)。

 辛さ成分の正体は「カプサイシン」という物質である。カプサイシンの辛さは、舌の灼熱感(焼けつく痛み)によるもので、これは口の中だけではなく、気管支や消化管、はては肛門にまでおよぶ。辛いものを食べるとお尻が痛くなるのはこのためだ。

 ドイツ連邦リスク評価研究所はカプサイシンの健康影響評価を行い、マウスを用いた動物実験で半数が死亡する量(半数致死量)は60~75mg/kg体重で、ヒトの胃に対する急性的な影響についてのNOAEL(毒性が観察されなかった量)を8.3mg/kg体重と評価した。